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底流で進む投資指標の好転 (2016年8月版)

米国の株式市場は順調に上昇しているが、日本の株式市場は今一つ伸びきれない不安定な状況が続いている。最大の要因は円高の進行であろう。上場企業は海外で多額の売上高や資産があり、円高になると決算時に円換算した場合、円ベースの価額が収縮するため、業績などが悪くなったように見える事が、相場の上昇をおさえていると思われる。このほか、先月号の当コーナーで述べたように英国の欧州連合(EU)離脱派や異様な言動を繰り返す米国の大統領選挙候補者等が煽動する「悪質な大衆迎合主義(ポピュリズム)」が一時的とはいえ、流行している事も世界経済の不安定要因として、日本の株式市場の重荷になっていると推察される。

 

しかし、これらの問題は元々、海外要因であり、国内投資家の信頼が高ければ株式市場は上昇するはずである。日本銀行が発表している日米家計の金融資産残高の構成比率(2016年3月末)は「株式等・投資信託の合計」で、日本は「14.4%」、米国は「45.7%」と大変な格差が生じている。なぜ、このような事になったのであろうか。一つはPER(株価収益率、株価を1株当たり純利益で除した数値)を軽視した株価形成をした事であろう。1989年12月末時点の平均PER(実績ベース)は、東証1部上場企業が「70.6倍」、米国を代表する株価指数の「S&P500」採用企業は「14.7倍」であった。

 

1980年代後半は土地の異常な上昇が続き、日本の国土面積は米国に比べて25分の1しかないが、日本全土の土地価額を合計すると米国が5つも6つも買えるとされていた。これにより地価の上昇による含み益から、実質1株当たり純資産の拡大を背景とした株価形成が進み、89年末にかけて東証株価指数(TOPIX)は「2,884.80」、日経平均株価は「38,915円87銭」の最高値を付けている。グローバル化とは国境の垣根が低くなる事であり、極端に高い日本の地価が許されなくなった事で地価の下落が発生し、実質1株純資産の支えを失った日本の株価は米国の投資指標の一つであるPERの水準まで長期間、下落せざるを得なかったといえる。

 

PERを軽視した株価上昇の反動は大きく、89年末の終値はTOPIXが「2,881.37」、S&P500は「353.40」であった。今年7月22日時点のTOPIXの終値は「1,327.51」になり、いまだに89年末の「46%」の水準にしか過ぎない状況だ。これに対して、S&P500の同日終値は史上最高値を更新中の「2,175.03」になっており、89年末比では「6.2倍」になっている。主要平均株価指数という平均ベースで株式を買っていた場合、日米では大きな格差が生じており、これでは一般の方々の株式市場への信頼度が米国を大幅に下回り、家計の金融資産に対する株式等・投資信託の比率が上がらないのも致し方ないと思われる。

 

貯蓄から投資のマネーの流れが進まないもう一つの理由は日本のデフレ的状況であろう。1994年末から2012年末にかけて、日米の消費者物価指数(除く食料・エネルギー)の騰落率は米国が46.3%(年平均2.1%)の「上昇」に対して、日本は5.3%(同0.3%)の「下落」であった。日本のように物価が下落しているのであれば利子率が低くても概ね元本が保証されている預貯金の方が、安定性もあって良い面もあると思われる。12年12月末で日本の家計金融資産残高に占める現金・預金の比率は55.2%(米国14.6%)になっているが、ある面では理にかなった現象であろう。しかし、これらはすべて過去のデータであり、足元の数値は激変している。

 

1989年末で大きな格差のあった日米のPERは劇的に変化している。今年の7月22日時点の日米主要平均株価採用銘柄の予想平均PERは東証1部が14.9倍、S&P500は18.4倍になり、驚くべき事に日本が米国のPERを下回る状況だ。同日の指数採用企業の予想平均配当利回りは東証1部が2.2%(加重平均)、S&P500は2.1%になっている。また、日本の消費者物価指数(除く食料・エネルギー、前年同月比)も10年4・5月のマイナス1.6%が、今年6月で0.4%上昇と物価水準は切り上がっている。日銀は2%の物価上昇を目指しているが、2~3年後には達成するであろう。底流で進む投資指標の好転はいずれ株価の上昇要因になると推察している。

 

 

(北川 彰男)

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