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急がれる少子化対策 (2024年6月版)

経済の軟着陸(ソフトランディング)シナリオを背景に、米株価は過熱なき高値圏が続いている。2024年3月期の日本上場企業の配当総額は、約16兆円と推計されており、再投資による日本株の再上昇を期待したい。

 

終戦後から続いた日本の総人口増加は、2008 年の1億2,808万人をピークに減少に転じており、24年5月1日現在の総人口(概算値)は、1億2,393万人(総務省統計局人口推計より)になる。国立社会保障・人口問題研究所の「将来推計人口」(出生中位、死亡中位等)によると、今後は減少を続けて70 年には8,700 万人、2100 年6,278 万人と、終戦時の7,200 万人を割り込む可能性を示唆している。2025 年から40 年までの5年間で、約 300 万人以上減少すると推計されており、50年の段階で、2020 年の人口水準を上回るとされるのは東京都のみで、同水準に対して90%以上になるのが神奈川県、千葉県、埼玉県、80%以上が、愛知県、滋賀県、大阪府、京都府、岡山県、福岡県、沖縄県とされる。減少が大きいのは、6割の水準を切るとされる秋田県を筆頭に、青森県、岩手県といった東北地域や、長崎県、高知県など九州、四国の半島部とみられている。余談だが、愛知県で増加が予想される地域は、常滑市、大府市、日進市、長久手市の4市となっている。

 

日本の出生数は、戦後まもない第一次ベビーブームに年270 万人前後、1970 年代前半の第二次に年 200 万人前後を記録した。しかし、2000 年代に第三次は到来せず、2016年に100万人を割り込むと減少傾向は加速し、2023 年には速報ベースで 75.8 万人と過去最低を更新している。要因として、夫婦が持つ子供の数の減少や、晩婚化や結婚願望のない人の増加などが考えられるが、1977 年以降の調査では、夫婦間の子供の数はそれほど減っておらず、後者の影響が強いと考えられる。政府は昨年末に「こども未来戦略」を策定し、「全てのこども・子育て世帯の切れ目ない支援」など、3つの基本理念と軸とした「加速化プラン」を骨太の方針に盛り込む。子ども・子育て支援関連法を改正し、児童手当拡充や育児給付金引き上げなどの経済的支援の強化を中心にして、財源は公的医療保険を通じた企業・国民からの支援金制度創設を盛り込む形での施行をめざしている。しかしながら、この対策は子育て世帯への支援が中心であり、並行して結婚を希望する人を増やす環境づくりが重要な対策と思われる。 50 歳時点の未婚率は、1990 年で男性が 5.6%、女性が 4.3%であったのに対し、2020 年には男性が 28.25%、女性が17.81%と男女とも大幅に上昇した。結婚を妨げる主な要因には、所得や雇用などの経済的な将来不安が挙げられており、結婚の条件として、男性は女性の経済力を、女性は男性の家事・育児の能力や姿勢を挙げる割合が増加しつつある。以前に比べて変化した、結婚に関する男女の意識も参考にしつつ、今後の対策を講じる必要があるだろう。また、65歳以上人口を示す高齢化率は、 2020 年 28.6%から70 年に38.9%まで上昇する見通しで、1995年をピークとした生産年齢人口の減少や、人口構造の変化、地域差の拡大を楽観視することはできない。

 

これらの問題は、経済の需要面や供給面、家計・個人、企業、行政など多面的な影響を及ぼすことが懸念される。需要面から見た人口の減少は、住宅はじめ食料、衣類、生活用品、自動車、電気、ガス水道といった、必需品市場の減少に直結する。減少が価格転嫁できなければ、それら市場の縮小は必然で、供給面も構造変化とともに、労働力や社会の担い手不足が生じこととなる。既に多くの業種で人手不足が叫ばれており、今後さらに事態は深刻化する。並行した行政・公共サービスへの影響も避けられず、なかでも社会保障の分野は早期に問題として顕在化するだろう。高齢者の増加とともに、医療・介護・年金等への費用は増加し、生産年齢人口の減少とともに税・社会保障の財源が厳しさを増すことは必至で、今後も人口状況に合わせた制度見直しがされることになる。

 

様々な課題の中、労働力や社会の担い手不足については、女性や高齢者、外国人などの参画率引き上げや、質の向上でカバー可能である。移民政策を取らない日本では、新しく導入される予定の育成就労制度などを活用し、自治体や企業、地域全体で多文化共生型の地域づくりに力を入れていくことは有効な手段と推察したい。

 

最後に、質の向上、いわゆる生産性向上が不可欠である。昨年、日本の名目 GDP(ドルベース)はドイツに抜かれ世界4位となった。円安の影響とはいえ、日本の約3分の2の人口で、総労働時間も少ないドイツが上回った事実は、生産性向上の課題解決が急がれる日本にとって、重要な示唆を含んでいるのではないだろうか。

(戸谷 慈伸)

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