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重要性が高まる日銀の金融政策 (2018年2月版)

株価に最も影響を与えるものは何であろうか。42年間近くにわたって証券市場の現場を観察してきた筆者の率直な印象では、1.企業業績の動向、2.中央銀行の金融政策、この2点になると考察したい。企業業績の変動要因は、経済、金融(金利)、為替(主にドル円)、商品市況(原油、銅など)、国際情勢、政治、市場内制度、法令・税制など多岐にわたっている。さらに「株価の変動要因」には、この企業業績の変動要因に加えて、需給(人気、テクニカル指標、裁定取引、信用残高等)も絡んでくるため、株価予想は極めて難解にならざるを得ないといえる。

 

しかし、このような株価変動の様々な要因の中で最も強力な威力を持っているのが、中央銀行の金融政策になると推察している。株式価値(株価)は「将来キャッシュフローの割引現在価値」などといわれているが、あらゆる株価材料の根底には金融政策があり、要約すれば『株価とは中央銀行の金融政策によって膨張と収縮を繰り返すもの』と解釈している。景気が悪いと中央銀行が金融緩和を実施する事でカネ余りになり、企業業績は好転する。しかし、好景気は過熱してインフレ率が上昇し、中央銀行が金融引き締めに転じる事でカネ詰まりになって実体経済が冷え込み、企業業績は悪化するというパターンだ。

 

ただ、このサイクルも現在のグローバル時代、高度情報化社会では大きく変容してきている。グローバル化というのは簡略にいえば国境の垣根が低くなっていく事だと思われる。日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査(16年9月~17年3月の期間内)によれば各国の主要都市の米ドルベースのワーカー(一般工職)の月額賃金は以下のようになっている。

 

ニューヨーク3,144ドル、メキシコシティー308~325ドル、東京2,339ドル、北京(中国)652ドル、バンコク(タイ)338ドル、クアラルンプール(マレーシア)321ドル、ジャカルタ(インドネシア)320ドル、マニラ(フィリピン)255ドル、ホーチミン(ベトナム)214ドル、ニューデリー(インド)213ドル、ヤンゴン(ミャンマー)124ドル、ダッカ(バングラデシュ)111ドル

 

なぜ、日本が世界の中で最初にデフレに陥ったのであろうか。前述の中国、インド、東南アジア各国にパキスタンを加えると総人口は36億2千万人を超える事になる。これだけ安価で膨大な低賃金労働者が近隣諸国に存在するのであれば当然、企業は賃金の低い新興国の労働者を使う選択肢を企業戦略の中に加える事になる。この賃金平準化のグローバルな圧力が日本の賃金上昇率を鈍化させ、物価上昇を抑制し続けた事で、日本のデフレは長期化したと思われる。また、ネット販売など情報化進展による価格の見える化も物価低下に寄与しており、金融引き締めの起因となるインフレは容易に発生しない構図にある。今後は人口が急増するアフリカ諸国の開発も急速に進むため、日米欧等の先進国に対する賃金や物価の抑制圧力は長期化する可能性が高く、金融引き締めは慎重に進める事が肝要だ。

 

日本経済の潜在成長率は1.0%程で、コアCPI上昇率も過去の実績からみて2%は非現実的なため、日銀の物価目標は1%に引き下げる事が妥当とみる金融政策論がある。為替の変動要因は多様だが、為替には両国の物価水準を平準化させる機能も有している。米欧の中央銀行であるFRBやECBが現在の2%程の物価上昇率目標を1%に切り下げるのであれば日銀も1%に下げても良いと思われる。しかし、日本だけが1%に引き下げた場合、投機筋は日銀が米欧並みの物価上昇目標を放棄したとして、圧倒的な投機資金で円買いを仕掛けてくるであろう。

 

ちなみに国際通貨研究所が発表している企業物価ベースの購買力平価は昨年11月で95円台であり、自己満足の金融政策を実施していれば以前のように急速な円高ドル安が発生し、企業業績の悪化から、株価は暴落するであろう。日銀の物価目標引き下げを意外に多くの政治家や経済学者が支持しているが、このような『生きた経済を知らない経済論』は、日本経済の円滑な発展、株価の長期上昇波動構築の大きな障害であり、決して主流派にはせずに封じ込んでおく必要があるといえる。

 

日本経済には巨額の財政赤字や近隣の低賃金諸国からのデフレ圧力など経済悪化要因が多々あり、今以上の金融政策の工夫が肝要だ。黒田東彦日銀総裁の任期は今年4月になり、後任人事が注目されている。本田悦朗駐スイス大使は財政と金融の協調的な運用が重要と新聞紙上でコメントしており、同氏が日銀総裁に選出された場合はデフレ脱却に向けて、より強力な政策が実施される可能性が高く、日経平均株価の今年の高値は91年3月の2万7,146円を目指すと思われる。黒田総裁の留任という無難な選択の場合、日経平均の同高値は91年10月の2万5,222円を目標値にしたい。

(北川 彰男)

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