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生成AI (2025年10月版)

世界的株高とともに、日経平均株価も初の4万5000円台に到達した。米国関税実施後の企業業績の修正期待や、AI(人工知能)ブームがけん引する形で、新しい段階へと入った。ただ、過去10年の日経平均予想PERの平均は約15倍で、現時点で18倍を上回る。反動への対応も想定しながら、上昇を期待したい。

 

昨今注目される株式市場の大きなテーマに、「生成AI」がある。時価総額世界1位企業の米エヌビディアは、生成AI向け半導体で独占的なシェアを握り、デファクトスタンダードとしての地位を築いている。

 

生成AIとは、ディープラーニング(深層学習)とよばれる機械学習の手法により、人が作り出すようなテキストや画像、音楽、ビデオなどのデジタルコンテンツを自動で生成する技術をさす。この技術革新は、さまざまな場面で活用されており、ニュース作成やゲーム、または広告などのクリエイティブな分野まで、幅広い利用と裾野が拡大している。

 

学習したデータを参考に、その中から適切な回答を探し出す従来のAIとは異なり、生成AIは自身が学習を続けることで、与えていない情報やデータをオリジナルかつ新たな形のアウトプットを可能としたことで注目を浴びている。ゼロから生み出す作業は人間独自の才能だが、生成AIの登場によってアイデアの創出もAIに依存することが可能となり、今まで以上に高度な作業が自動化できるようになった。最近ではビジネスシーンで活用されるケースが増え、多くの企業や組織が日々の業務に導入を開始している。

 

実用化された生成AIにはテキスト、画像、動画、音声などがあり、個々に適した活用方法を選択し、これまでの人的作業を大幅に効率化、新たな発想やアイデアを形にすることを可能にしている。テキストは、主に長文の要約やキャッチコピーのサンプル、プログラミングコードの生成などの作業を自動化し、画像は、イメージに近いオリジナル画像を生成する。動画は、現時点では数秒ほどの短編の生成にとどまるが、近い将来、長編ビデオ作成も示唆されている。音声は、ある人物の声を大量に学習し、その声質で自由に話す音声を生成することが可能で、本人の声を収録せずに任意のナレーションを読み上げたり、アバターに音声を付加する。

 

現段階での生成AIには、注意すべき点や課題も残る。出力情報が必ずしも正しいとは限らないため、必ず事実の真偽を確かめることが必要で、そのまま使用すれば自身の信頼性を損ないかねない。画像生成や音声生成には、著作権問題との兼ね合いもあり、有名人の作品をAIに多数学習させることで、本人とそっくりに生成できてしまい、結果的に著作権を侵害する可能性や、本人の作品であるかのように拡散されることで、風評被害を受ける可能性もある。入力情報によっては、情報漏洩やセキュリティ上の懸念も考えられ、万が一、生成AIに個人情報を入力し記録された場合、他のユーザーが利用した際に情報が表示される可能性も残る。また、会議用資料の作成目的で文章要約を指示した場合、同様の文章が他のユーザーへの回答として表示されてしまうおそれもある。生成する文面やプログラムコードが悪意を持ったものであるかどうかは、生成AI自身には判断できないため、悪意を持った利用者によってサイバー攻撃に悪用されることも考えられる。

 

今後は、生成AIの台頭で失われる仕事や、新しく生まれる仕事のすみ分けが進むと予想される。AIの稼働でモノを形にする技術が、これから格段に発達し、より業務の自動化の進展とともに、人間に求められる役割や仕事のやり方も変化するとみられる。経済産業省は、AIを用いる人に求められるスキルは、クリエイティビティ(創造性や発想力)として、言語化の能力や対話力、分析力、仮説や問いを立てる力、検証する力が必要という。

 

現状の生成AIには、人間が持つ感情の理解や解釈・表現に関するまでの能力はない。学習したデータからパターンを見出だすことは可能でも、独特の感情や創造力、直感は持ち合わせておらず、あくまでこちらの指示通り動く人工知能であり、臨機応変にアウトプットを返してくれる存在ではない。

 

実用化が進む生成AIは、人間の業務効率化や刷新化、人間を代替する可能性を探るものであることは確かである。今後は、人の価値や能力をどう評価すべきかを再考する時代が到来するだろう。このコラムも生成AIに代わられる時代が来るかもしれない。

 

(戸谷 慈伸)

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