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2000万円問題 (2019年8月版)

6月はじめ金融庁の金融審議会のまとめた報告書「高齢社会における資産形成・管理」が大きな話題となった。

 

公的年金だけに頼った生活設計では資金不足になる可能性を指摘、平均的なケースとして男性65歳以上、女性60歳以上の夫婦では年金収入だけに頼ると毎月5万円の赤字となり、以後30年生きると2,000万円不足するという推計結果である。

 

その後、「老後資金は2,000万円必要」というフレーズが独り歩きし、「政府は無責任」「老後資金2,000万円も貯められない」といった批判や不安が飛び交い、金融相が報告書の受取りを拒否する事態にまで及んだ。

 

政府の呼びかけ、「人生100年時代に備えを」に呼応する形で「市場ワーキンググループ」という審議会委員が何度も議論を重ね、それをまとめた報告書であり、メンバーは大学教授はじめ、金融サービスに携わる専門家で、国民の老後生活について真剣に議論され、てまとめ上げられたものである。しかし、一部マスコミでは、定年延長や資産運用での自助を呼びかけるのは、公助の限界を認め、年金だけでは暮らしていけないと暗に示したものだ。といった批判的な意見が多く聞かれる結果となったのは残念であった。

 

国民年金制度の目的は、「憲法第二十五条に基づき、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする」ものであり、日本の年金制度は、現役時代の収入を100%保障するため仕組みではないことを再認識すべきであろう。

 

2019年1月1日時点の人口動態調査によれば、日本の人口は10年連続減少し、15~64歳の生産人口年齢は7,423万887人と前年比61万3,028人減少した。全体に占める割合は59.5%に低下、高齢化は進んでおり、現役世代が負担増や年金の今後を不安に思うのは当然ではある。ただ年金収入の不足分は、取り崩して生活することになること自体、今も昔も老後資金が必要なことに変わりはない。70代以上の親世代と違って、今の現役世代はお金が貯まりにくい環境にあるため、知識を持ち、お金を貯める意識を高めることが必要であろう。金融庁が若い世代にNISAやiDeCoといった投資による資産形成を促していることについても、リテラシー向上に有用である。報告書は51ページあり、現状と課題がまとめられたレポートになっている。現在を取り巻く経済環境や社会構造の変化、高齢化社会の今、将来すべきことが端的にまとめられており、一読に値するだろう。

 

「老後資金は2,000万円必要」の話題は、弊社ファンドブックでも以前より「ゆとりあるセカンドライフを送るために」として、生命保険文化センター「平成28年度生活保障に関する調査」と、厚生労働省「平成29年度の年金額の例」を取り上げ、年153.6万円ずつ、月12.8万円不足するとのシュミレーションを掲載している。月12.8万円の取り崩しが続いた場合、2,000万円は13年で枯渇する計算である。

 

今回、2,000万円が注目されたのは、誰もが現役世代時に老後について考えるべきところを遠回しにし、突然、目標とも言える老後資金の金額が国から具体的に示されたことに戸惑ったためと思われる。ただ年金のみで暮らしていけないのは政策のミスではないことを、再確認した人も存在する。何も行動を起こさない事は避けるべきである。親世代と同じような老後を迎えることが難しいのは、歴然とした事実なのである。

ある損保会社の現役世代向けに行なったアンケートでは、「将来の生活において、どの程度お金が必要か計算したことがあるかどうか」という質問に対し、約3分の2の人が「考えたことがない、計算の仕方がわからない」、約4分の1の人が「計算をしたことがある」という結果であった。老後のお金について無関心なわけではなく、仕事に子育てにと、目の前で精いっぱいであるために先送りされていることが理解できる。

 

老後資金作りのポイントは、時間を味方につけて少しずつでも目標を決め、貯めていくことである。そして、少し先の自分を想像しながら、NISAをはじめ制度改正をチェックしつつうまく利用していくことが大切である。 今回の問題が話題を集めたことは、老後資金作りに対する関心を持つ、気づきの良い契機なることを願いたい。

 

(戸谷 慈伸)

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