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米国の景気拡大はいつまで続くのか (2017年7月版)

米国の戦後の景気循環(全米経済研究所より)を構成する11波動の平均の景気拡大期間は58カ月、後退期間は11カ月になっている。現状の12波動は2009年6月を底にして、今年6月で96カ月目になり、過去最長の91年4月~01年3月の120カ月、61年3月~69年12月の106カ月に次いで3番目の景気拡大期間が進行中である。今月号の当コーナーでは日本の株式市場に多大な影響をもたらす米国経済の動向について考察したい。

 

米国の景気拡大がいつまで続くのか。逆にいえば景気後退はいつから始まるのであろうか。最近の9~11波動における景気後退時には一つの共通点がある。それは、米国2年物国債の流通利回りが、10年国債流通利回りを上回る状況が一定期間続いたのちに景気後退が始まっている事だ。9波動の景気拡大期間は82年12月~90年7月、同じく10波動・91年4月~01年3月、11波動・01年12月~07年12月になっている。

 

イールドカーブとは縦軸を金利、横軸を期間として利回りと残存年数の関係を表す「利回り曲線」の事をいう。通常のイールドカーブは債券の残存期間が長くなるほど利回りは上昇するので右肩上がりの形状をしている。しかし、足元は景気過熱から中央銀行が利上げを続けていても、将来的な景気減速や低インフレから金利が低下する事を相場が予想して長期金利が短期金利ほど上昇しなくなり、償還期間の短い2年国債が10年国債の利回りを上回るケースが、利上げ局面の終盤に実現する事がある。『相場は相場に聞け』という格言は、相場には先見性があるので、その時は不自然にみえても時間が経てば相場の判断が正しい事が多々ある事から、このような格言が生まれたと思われる。

 

米国景気循環の9波動の景気後退は90年8月になり、同月から8カ月間、景気は後退しているが、その『1年8カ月前』の88年12月13日に米国債の流通利回りは「2年物9.155%、10年物9.15%」で長短金利は逆転しており、それが89年10月まで概ね継続している。10波動の景気後退は01年4月、後退期間は8カ月間になるが、『1年2カ月前』の2000年2月3日に米国債利回りは「2年物6.50%、10年物6.43%」で長短金利は逆転、同年12月までほぼ続いている。同じく11波動の景気後退は08年1月、後退期間は18カ月間になるが、『2年1カ月前』の05年12月27日に米国債利回りは「2年物4.342%、10年物4.341%」になり、その後は何度も中断しながら、長短金利の逆転傾向は07年6月まで継続している。

 

9~11の景気循環波動を平均すると2年国債の利回りが10年国債の利回りを最初に上回ったのち、「1年8か月後」に景気後退に陥っている。米景気の拡大期間に対して多様な議論が交わされているが、過去の金利の状況から考えた場合、少なくとも「2年国債が10年国債の利回りを上回る状況」が実現する事が前提であり、さらにそれから1~2年経過したのちに景気後退が始まると推察するのが、妥当なのではないか。ちなみに6月30日時点の米国2年国債は1.38%、10年国債は2.30%で、まだ大きな開きがある状況だ。

 

また、第9~11波動におけるFFレート(米国の政策金利)のピークは第9・89年3月、第10・00年5月、第11・06年6月になっており、最初に長短金利が逆転した時期は、FFレートの引き上げの打ち止めに平均4カ月先行している。17年6月、FRB(米国の中央銀行)メンバーのFFレート予想は17/末・1.375%、18年末・2.125%、19年末・2.875%になっているが、量的金融緩和の縮小もあり、利上げは18年末か19年3月末で打ち止めになると予想している。FFレートのピークを19年3月末と仮定した場合、長短金利の逆転は4カ月前(第9~11波動平均)の18年11月になり、米国景気後退は、その1年8カ月後(同)の20年7月になる見通しだ。米景気拡大はあと36カ月継続し、戦後最長の132カ月になる可能性もあると思われる。

 

以上のように米国景気には強気でみているが、米国株に関しては余り楽観的な予想はしていない。その最大の要因は経済規模に対して株価水準が高過ぎる事だ。95~16年のGDP(国内総生産)に対する米国株の時価総額(NY証券取引所・ナスダック合計、年末ベース)の平均値は「125.5%」になっているが、今年5月末では「153%」の水準まで上昇している。ITバブル時の99年末の「172%」と比較すればまだ、上昇余地はあるのかもしれないが、米国株はかなり高水準の状況にあり、GDPに対する時価総額の数値はリスク要因として把握しておく必要があると推察している。

 

(北川 彰男)

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