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消費税率引き上げを前に (2019年9月版)

来たる10月に国内経済における大きなイベント、消費税率の引き上げが行われる。第2次安倍政権発足以後、2014年4月に第一段階として8%への引き上げを実施して以来、同年11月と16年6月の2度にわたり先送りを余儀なくされ、今回3度目の正直となる。

 

景気の現状は、8月9日内閣府発表の19年4‐6月期GDP(国内総生産)速報値では、実質の年率換算で1.8%増と、事前の予想を上回る3期連続のプラス成長となっている。

 

今回の特徴は、過半を占める個人消費や設備投資などの内需がけん引役となり、海外需要の弱さをカバーする格好となったことである。個人消費については新車販売や、新元号に関連する需要、大型連休効果で宿泊業をはじめとしたサービス消費が堅調であったようだ。完全失業率は2%台半ばとバブル期並みの低水準、有効求人倍率は全都道府県で1倍を超え、実質雇用者所得も拡大している。7‐9月期も一定の駆け込み需要を予想してプラスが続く見通しだが、引き上げ後に関しては反動も避け難く、不透明感が漂う。

 

前回の増税直後、14年4‐6月期は個人消費に大きくブレーキがかかり、実質成長率マイナス7.2%と景気を冷やした。今回は小幅で、政府も軽減税率導入やポイント還元策などの対策を講じており、消費全体の大きな減速は避けられるとの声も聞こえる。また、引き上げ実施までの期間が短いため、耐久消費財や持家・分譲住宅の買い替えといった駆け込み需要も小さいうえ、自動車や住宅は実施と同時に、課税見直しが予定されるなど、反動減の影響も小さいとの見方もある。

 

その一方、今後、最低賃金等の引き上げも実施予定だが、実際の所得増加は老後資金積み増しのために、働き続ける高齢者の増加が雇用者所得を増やしているものとの声もある。将来に対する不安、消費マインドの悪化は、2,000万円問題に象徴されるように完全に払拭できず、消費は押し上げられないとの意見も多い。

 

国内要因の景気への影響のほかにも、海外や為替も減速要因として、年後半の下振れするリスクとして考えておくべきであろう。今年前半の平均ドル円レートは109円台後半で推移していたが、米国の利下げ、中国への関税第4弾発動、為替操作国発言等によって円高局面を迎えている。円高が続く事となれば、実質GDPを押し下げる要因になると考えられるとともに、トランプ大統領のドル安志向からも、為替反転の可能性は現在のところ少ない。

 

引き上げ後、海外経済や為替動向などを含めた、様々な要因で持続的な景気の減速感が強まれば、計画されている2兆円超の消費税対策に相当規模の上積みが行われる可能性が浮上する。政府は、消費増税によって景気の下振れリスクが生じる場合、必要な景気対策を行うことは明言している。今後予定される東京オリンピックや衆院選、安倍政権の任期を考えれば増税後の景気減速に最大限努力、注力した実績作りは政権運営のアピール材料としても必定と考えられる。

 

景気対策は一時的カンフル剤の役目はあるものの、恒常的に景気を上向きにする処方箋とはなりにくい。政府としても消費水準がある程度落ち込むことは避けられないことは承知の上であろう。対策の規模は大きければ大きいほど需要の落ち込みへの緩和効果があるが、先を見越した経済政策運営として重要なポイントになるであろう。

18年度税収が、バブル期を上回り、60.4兆円の過去最高を記録したという7月の報道は記憶に新しい。バブル期以降、何度かの所得税、法人税減税を実施しながら、上回ることとなったのは、消費増税のおかげに他ならない。安倍総理は党首討論会において「引き上げ後、10年間はさらなる増税は必要ない」と述べている。

 

財務省の国民負担率(国民所得比)推移によれば、バブル期(平成2年度)と現在(平成30年度)を比較した場合、租税負担率は27.7%から24.9%と低下した。しかし、社会保障負担と合算した国民負担率は、38.4%から42.5%に上昇している。

 

平成の間は、税金の負担は減ったものの社会保障負担が上回って上昇したため、国民の感覚では負担が増加(可処分所得は減少した)感覚が続いているのではないか。今回の引き上げが、将来への不安が軽くなる消費税増税であってほしい。

 

(戸谷 慈伸)

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