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若者に求められる金融リテラシー (2022年6月版)

5月の米国株式市場は、ウォール街の格言「セルインメイ」どおりの展開となり、3指数とも年初来の安値を更新した。米FOMC(連邦公開市場委員会)では、議長発言を追認しつつタカ派の姿勢に対して、市場関係者は身構え、リスクを減らす動きが続いている。

 

日米の家計金融資産は、公的な現金給付や株高を背景に、過去最高を更新している。昨年12月末時点の残高は、日本が約2,023兆円、米国は約118.2兆米ドル(約1.54京円、1ドル=130円換算)であった。米国の場合、幼少時から金融教育を受ける機会が多く、金融資産形成に積極的な成果を享受していると考えられる。米国の家計金融資産に占める株式・投信の割合は5割を超え、保険・年金でも確定拠出年金を通じて投信などで運用されている。対する日本は、金融資産の半分以上は現預金が占め、株式・投信は16%程度にとどまっており、運用成果も限定的となりがちである。今後、日本における金融リテラシー向上は必須と考えられる。

 

日本における金融教育は、戦後復興を目的に資金獲得を政府と日銀が主導し、国民に貯蓄を奨励したのが始まりといわれる。蓄積した資金を国内の工業化などに割り当て、復興の礎を築くために貧しい中でも倹約に励み、自主的に貯蓄を行うという勤倹貯蓄の考え方が存在した。その後高度経済成長期を迎え、消費は美徳となり、日本の家計は欧米並みの豊かさを求め、耐久消費財の消費が増加、経済成長を生み出していった。70年代には2度のオイルショックによるインフレを経験し、経済・金融両面の構造改革時代へ突入、個人の価値観は多様化し始めた。バブル崩壊以降には、ペイオフの解禁やリーマンショックを契機に、個人の金融リテラシー向上の重要性が内外で課題となった。

 

4月より実施された高校向け学習指導要領では、家庭科と公民科を中心に資産形成が取り上げられている。家庭科では、生涯を見通した経済計画の重要性を理解させる中で資産形成の視点に触れ、公民科では、個人の資産形成が様々な経済主体の資本を増加させ、社会発展の役割を担うことを理解させることが求められた。過去、金融リテラシーの教育は、業界を中心に行われてきたが、学生に対する取り組みは今回が初めてとなる。背景には、4 月の成年年齢引き下げが意識されたと推察される。4月より多くの若者は、高校3年の年齢とともに自立した契約主体となる。民法上の成年年齢は、一人で契約をすることができ、父母の親権に服さないという2つの意味合いをもつ。高額商品購入やクレジットカードの作成、ローン組成といった行為も、法律上は自身の意思のみで正式に契約することが可能となる。しかし、この年代での契約に対する知識や経験は十分とは言えない。投資に関するトラブルは若者中心に増加し、報道では20 代の消費生活相談件数は、5年間で約10倍に急増したといわれる。

 

日本の平均寿命は延び、単身者や共働き世帯が増加、働く期間も長期化し、65歳から69歳の約半数が働く時代となった。昨年4 月には、 70 歳までの雇用が企業の努力義務化されるなど、生き方も大きく変化している。多様な価値観や、人生観等が存在する現代社会において、若者には人生を自立するための、お金に関する知識や判断力、すなわち金融リテラシーが必要不可欠と考えられ、生きる力を高める大事な指針となり得る。わが国の世代別貯蓄残高は、60歳以上の世帯(2人以上)が6割近くを保有している(総務省家計報告より)。もし譲り受けた資産を上手く活用できなければ、家計消費の拡大や、次世代の資産形成の促進は、限定的なものに留まることになるだろう。

 

投資にはリスクが存在し、運用リターンも変動する。投資は分散でリスクを低減し、長期保有によって安定化をはかることや、国内に限定せず海外への投資も行うことで、世界経済の成長リターンが得やすくなると一般的には考えられている。資産運用について学ぶ場合、投資のリスクとリターンの関係を理解することが必須となる。

 

まずは、リスクとリターンの関係にはローリスク・ハイリターンの金融商品は無いということを認識することから始めたい。

 

(戸谷 慈伸)

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