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超長期国債の発行と老朽インフラ (2016年10月版)

国土交通省の資料によれば全国73万橋の橋梁のうち、建設後50年を経過した橋梁の割合は2016年時点で「20%」、10年後には「44%」になり、この他に建設年度不明橋梁が約23万橋あるとされている。全国の橋梁(約73万橋)・トンネル(約1万本)等は国が定める統一的な基準により、5年に1度の近接目視による全数監視の実施が昨年より施行されているが、一部の構造物で老朽化による変状が顕在化している状況だ。日本は台風や地震等の天災が多く、老朽化したインフラの劣化が急速に進む可能性もあり、思わぬ災害に直面する事が強く懸念されている。

 

このような事態を受けて、産業面では次世代社会インフラ用ロボットの開発・導入を促進し、橋梁・トンネル等のロボットによる近接目視や打音検査の支援が進む見通しであり、インフラの維持管理の徹底と低コスト化、ロボット産業の育成を合わせて推進していく方針だ。しかし、老朽化したものは、いずれ建て直す事が必定であり、日本の厳しい財政状況の中で高齢化による社会保障費の継続的な増大と合わせて、財源の問題をどのように解決するのか、日本経済は重い課題に直面しているといえる。消費税率の引き上げなど増税政策が思うように進まない中で、どのような道を選択すれば良いのであろうか。

 

9月20~21日の日本銀行金融政策決定会合で、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という新しい「金融緩和の手法」が発表されている。金融市場は難しいため一般の方には理解しづらい面もあるので、なるべく専門的な表現は除外し、結論のみを簡略に述べたい。今回の金融政策の最大のポイントは、日銀が国債等を買い付ける量(金額)を目標にするのではなく、「金利を目標」にした事であろう。具体的には代表的な長期金利の10年物国債の利回りをおおむね「0%程度」に誘導すると表明しており、「マイナス金利」と「国債の買い入れ」を組み合わせる事で長期金利をある程度、誘導する事は可能としている。

 

中央銀行の金融政策は短期金利を対象に誘導するものであり、長期金利は市場のすう勢によって水準が決まるため、長期金利の目標設定はできないというのが、金融市場の常識になっていた。今回の金融緩和の手法は、驚くべき事に日銀自身が、これを大転換するものであった。新手法のもう一つの重要ポイントは、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が「安定的に2%を超えるまで」、現在の金融緩和を続けるとしており、一時的に物価が2%を超えても2%台が定着すると判断しない限り、金融緩和を継続すると約束している事だ。これにより、現在の金融緩和政策は相当な期間、続く事が予想される。

マイナス金利政策の最大の効用は、国債の買い入れと組み合わせれば長期金利の一定のコントロールができるという実績をつくった事であろう。これにより、長期金利の低位安定を相当な期間、続ける事が可能になったと推察したい。日銀の金融緩和は新しい段階に踏み込んでおり、超低水準の金利が継続する現状は絶好のチャンスだといえる。この機会を活用して10年以下の国債の発行を減額し、40年国債等の超長期国債の発行を大幅に増加させるべきであり、それを国内の老朽化したインフラ整備の財源に充てるべきであろう。

先月号の当コーナーでご案内した低利100年国債が先行し過ぎというのであれば次善の策として、50~60年国債の発行を検討する必要があると思われる。借金で最も怖いのは利払い費の増加である。新興国の賃金や物価水準が日本に接近してくる事は時間の問題であり、いずれ日本も金利が上昇するとみたい。現在の超低金利状態を極力活用し、将来的な利払い費の急増を封じ込む事が肝要であろう。

 

 

(北川 彰男)

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