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マイナス金利の効果と今後の動向 (2016年4月版)

株式市場は乱高下を繰り返しているが、市場の混迷の一因として、「マイナス金利」という新しい金融政策への戸惑いもあると思われる。本稿ではマイナス金利の効果と今後の動向について述べたい。日本銀行が金融機関から国債等を買い入れた場合、その代金は各金融機関が日銀に保有する日銀当座預金に入金される。3月16日に発表された今年2月の日銀当座預金残高は累積した金融緩和の影響もあり、約254兆円の規模になっている。

 

日銀はこの当座預金を同行が設定している基準で3つに分類しており、1.基礎残高(約209兆円)には従来通り年0・1%の金利をつけ、2.マクロ加算残高(約22兆円)は0%の金利とし、他の部分は3.政策金利残高(約23兆円)として、「年0・1%のマイナス金利」を適用する仕組みになっている。

 

基礎残高の変更は予定されていないが、金融機関の収益を過度に圧迫しないようにゼロ金利が適用される「マクロ加算残高」の部分は原則的に3カ月ごとに見直して金額を増加させる事で、マイナス金利の適用対象を「10兆円~30兆円」の規模に据え置く見通しだ。様々な問題を考慮して導入しているため分かりにくい面もあるが、マイナス金利は日銀当座預金の一部のみに適用されるものだ。

 

ただ、常に先を読んで動く金融市場では凄まじい効果をもたらしている。10年物国債の流通利回りはマイナス金利導入の決定前は0・22%であったが、3月下旬時点の同利回りはマイナスの状態だ。これは、流通市場で10年国債を買った場合、利息分を差し引いても償還時には損失になる水準まで、国債の債券価格が上昇している事を意味している。国債の流通利回りは企業への貸付金利や個人の住宅ローン金利に影響をもたらす事から、これらの金利は一層の低下が予想されている。

 

マイナス金利の導入は投資を抑制してきた中小企業等には大きなチャンスになると思われるが、より効果を鮮明にするためには長年の懸案事項である人口減の問題に対して、一段と注力する事が肝要であろう。現状のままでは、日本は人口の減少と高齢化により、半永久的に内需が衰退する可能性が高く、これではマイナス金利を導入しても投資が本格的に回復する見込みは薄いとの論考がある。

 

このような悲観論を述べる専門家は多数いるが、虚しい限りであり、事態を好転させる方策を真摯に熟考すべきであろう。その道は平たんではないが、内需停滞、需要不足の元凶となっている人口減に一定の歯止めをかける事を政策の最優先課題にすべきだと思われる。方法論はいくつもあるが、出生率の上昇に成功した欧州の国々のように女性が仕事をしやすく、子育てのしやすい社会づくりをしていく事が何よりも肝要であろう。

 

また、訪日の旅行客や留学生、技能実習生の増加に国を挙げて取り組んでいくべきだと思われる。さらに日本語の検定試験制度を今以上に世界に広めて、一定の日本語能力を持った外国人に対して様々な優遇措置を採用し、単純な移民ではなく、日本の文化等に理解力のある外国人の定住を進展させる事ができれば国民感情の抵抗も小さく、人口減にブレーキを掛ける事も可能になるのではないか。人口減対策を着実に推進していけば投資マインドの変化につながり、マイナス金利の効果を増大させ、国内投資の追い風になるであろう。

 

このほか、マイナス金利政策には円高抑制の効果もあると思われる。国際通貨研究所が発表している企業物価ベースの購買力平価(国々の物価で為替を推計した数値)は1ドル=99円弱の水準だ。今年2月の円高は同数値等を基に投機筋が仕掛けたとみている。1月29日に日銀がマイナス金利導入を決定していなければドル円は一気に105円か100円近辺まで急騰し、日本経済は大混乱に陥っていたと思われる。マイナス金利は円高を仕掛けようとする投機筋に強い牽制になるであろう。

 

また、これほどの低金利をもっと活用する事が肝要だ。それは政府の財政出動のみに頼るのではなく、民間マネーを活用し、新興国のエネルギーや物流システム等のインフラ投資につなげるプロジェクトに政府が支援するシステムづくりが、重要なポイントになると思われる。5月に開催予定の主要7カ国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、日欧の低金利マネーをアジア等の新興国のインフラ投資に結び付けるための国際協調が一段と進む事を期待している。

 

 

(北川 彰男)

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