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自分のための年金づくり (2014年7月版)

年初より不振であった日本の株式市場は徐々に立ち直りの状況になっている。主要平均株価に採用されている企業の直近の平均PER(株価を1株当たり利益で除した数値、予想ベース)は14~15倍台で推移しており、米国の主要平均株価の採用企業の平均PER(同)の15~16倍台を下回っている。投資指標面で日本の株価に割高感はないと思われる。

今後のリスク要因としては、過去の傾向からみて米国の株式市場の水準が高すぎる事が挙げられる。米国の名目GDP(暦年ベース)に対する株式時価総額(年末ベース、NYSEとナスダックの合計)の比率は、1991年から2013年の平均値で「110%」であった。同比率は株価が大暴落をするリーマンショック前の07年10月末で「143%」になっているが、今年5月末時点では「148%」(GDPは14年1~3月期の数値を使用)と既に上回っている状況だ。

過去の同数値のピークと比較をした場合、日本のバブル相場が大天井をつけた89年末の「149%」、米国のITバブル時の99年末の「172%」よりは下回っており、「まだ」大丈夫なのかもしれないが、「もう」警戒すべき段階に近付いているとも言えるのではないか。また、米国の代表的な株価指数であるS&P500の1968年~2008年の年末最終週のPERの平均値は17.6倍(実績ベース)になっており、直近の19倍台(同)は過去の数値より多少、割高だといえる。

ただ、米国の株式市場が大きな暴落に陥るとは予想していない。その最大の理由は、長年の懸念事項であった米国の経常赤字問題が大幅に改善しているからだ。経常収支(貿易収支、サービス収支、所得収支等で構成)は国全体の貯蓄(国民所得と消費の差額)から投資を差し引いた数値であり、経常赤字はそれだけ投資を呼び込む魅力が国全体にあるともいえるが、余りにも巨額な数値になった場合、ドルの国外流出が加速し、基軸通貨であるドル不信が高まるとして、有力な経済学者等が、1980年代後半より警告していた。

米国の名目GDPに対する経常赤字の比率は87年の3.3%から、91年には一旦、経常黒字へと転換しているが、その後は悪化の一途をたどり、06年には5.8%まで肥大化していた。しかし、リーマンショックが発生した事で、米国の貯蓄不足の主因である過剰消費に急ブレーキがかかり、同比率は09年に2.6%、13年には2.3%まで急速に縮小している。世界経済の一大波乱要因であった米国の経常赤字バブルは、リーマンショックという経済現象により解決に向かったといえる。

以上を総括すれば日本の株式市場に多大な影響を及ぼす米国の株式市場は、「実体経済の規模」や「企業利益の水準」との比較で、株価は先行し過ぎている面があり、いずれ調整が入る事は否めないと思われる。しかし、大きな悪材料であった米国の経常赤字バブルは着実に解決に向かっており、調整売りは実体経済が株式市場に追いつくためのスピード調整に留まると推察している。

株価は今後とも様々な要因によって、短期的にはめまぐるしく上下動を反復するであろう。ただ、長期波動でみた場合、既に日米の予想PERは平準化し、今後は米国のように利益の伸びに応じて株価も上昇する市場が定着するとみたい。1971年~2007年の東証株価指数ベースのEPS(1株利益)は年率4.9%の伸びであった。市場のグローバル化が一層進展する今後の経済環境において、日本の上場企業のEPSが年率5%の伸びを長期間、維持する事は可能だと思われる。

直近の日経平均株価ベースの予想EPSは1030円台で推移しているが、同EPSが今後17年間にわたって年率5%の上昇を継続した場合、日経平均のEPSは2360円以上になり、PERを17倍で計算すれば日経平均株価は17年後には4万円を突破する事になる。主要平均株価に連動する投資信託等をじっくり保有するなど、『自分のための年金づくり』に株式市場を活用していただく事をご提案したい。

(北川 彰男)

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