拡がる推し活消費 (2026年5月版)
中東情勢に振り回され、一喜一憂する展開が続いている。日米とも株価は最高値を更新する場面もみられたが、AIの成長期待が支えているといっても過言ではない。リスク選好姿勢が回復しつつある中、決算発表を機に次の展開へ移行するか、見極めどころとなる。
この5月で活動を終了する人気グループ、「嵐」のラストライブツアーが開催されている。グッズの購入には、専用アプリの入場整理券によるオンラインもしくは、グッズ会場のみの購入のため、人気グッズに品切れが続出しているようだ。
2010年代の後半から拡がる「推し活」は、最近では公的な調査でも取り上げられるようになっている。日銀の「さくらレポート」に、小売業では「コストの上昇から値上げを行っているものの、キャラクター等とのコラボ商品が完売となるなど、若年層の推し活需要は旺盛」とか、宿泊業では「客室料金を前年から数千円引き上げても、イベント開催の多い週末は満室状態が継続」などのレポートもあり、推し活の活況ぶりが目を引く。
昭和の時代、熱狂的なファンは「追っかけ」と呼ばれ、平成には「オタク」と呼ばれる特定の人々が存在したが、令和の推し活もそれら活動と類似する。推し活とは、アイドルやアニメ、俳優、ゲームキャラクターなどの推しと呼ばれる存在を応援するため、お金や時間を投じる行為のことを指し、2021年の流行語大賞にもノミネートされるなど、社会的にも認知されている。令和の時代には、ほぼ3人に1人が推しを持つとされ、単なる趣味を超えた生活文化として定着しつつあり、世代や性別を問わず幅広い層に浸透していることが特徴といえる。特に若者を中心として日常に組み込まれつつあり、民間の調査では20代女性で45%、男性29%が推し活をしている。
推し活に伴う消費は、大きく4つに分類される。公式的に販売される、アイドル事務所やゲーム制作企業などが提供する、グッズやイベントへの支出。ファンが自主的に活動し、推しの記念日を祝うイベント開催など、事業者が関与しない支出。また、推しに関連したイベントを目的とした交通費、宿泊費やカメラの購入への支出。推しが企業やブランドとコラボした、商品購入などの連動型消費、などがある。
若者世代では、推し活や参加型イベントへの意欲が高く、SNSを通じて応援する仲間とのつながりやSNSの利用頻度や生活の楽しみが、仕事へのモチベーション向上に寄与している。また趣味の範疇を超えて、精神的な充足だけでなく、自分のためにグッズを買うというよりも、推しを応援するためにグッズを買う行動が消費を拡大させている。
市場規模は、ここ数年拡大を続けており、2025年3月時点で約3.8兆円に達すると推計され、ライブや演劇、映画などのエンタテイメントも回復傾向にある。昨今の物価高の中で目立つのが中高年層で、コロナ以後の総務省の家計調査(2人以上世帯)では、映画や演劇の入場料や宿泊料などの関連消費額が、中高年層を中心に支出金額が増加傾向にある。従来は、数千〜1万円程度のチケットやグッズ販売が中心だったものが、参入とともに高額化したサービスも登場している。子育てを終えた中高年層や、未婚率上昇と昨今の賃上げを背景に、自分で自由に使える小遣いの増加が全体を後押ししており、高齢化が進む中、中高年の存在感もますます増している。日本人アーティストの海外ライブや、海外で活躍する野球やサッカー選手のスポーツ観戦のためだけに海外旅行に数十万円を使う例も見られるようになり、その活動の様子をSNSに投稿し、自分の推しを広める志向が消費を後押ししている。グッズの購入にはじまり、関連イベントや聖地巡礼などに赴く交通費や宿泊費、会いに行くために着飾る衣装や化粧品の購入、購入グッズを飾る部屋の備品の購入など、使い途も様々である。
経済的視点でも規模の拡大や推し活人口の増加、目的が自分のためだけなく応援という新たな消費行動は、注目すべきと考えられる。人気マンガ「名探偵コナン」の劇場版映画は、興行側の工夫とともに応援を目的に繰り返して見る人が増えており、2020年以降の興行収入は増加傾向を辿る。そのほかにも、過去の名作アニメや昭和ファッション、歌謡曲のリメイクで、親子でのコンテンツ消費や推し活需要につなげるケースもあり、すそ野は広がりを見せている。
推し活は、個人の趣味や自己表現にとどまらず、経済的にも影響力を持つ新しい消費の形態といえる。今後もSNSの普及や参加型イベントの増加とともに流行として捉えるだけでなく、拡がる消費として注目しておきたい
(戸谷 慈伸)
























