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インボイス制度 (2023年10月版)

金融政策に変化のない中で、株式市場は上値の厚い壁に拒まれる展開が続いている。経済対策など上値追いの材料に期待したい。

 

インボイス制度が、10月からスタートした。正式名称は「適格請求書等保存方式」といい、消費税に関する制度である。「適格請求書」とは、消費税の税率や税額を区分して記載した請求書のことで、海外の「Invoice」を日本語読みにした。

 

簡潔には、販売者が消費税の正しく記載された請求書を発行し保存する制度のことで、①発行者氏名または名称、②取引年月日、③取引内容、④対価金額、⑤受領者氏名または名称が記載されたものである。2019年消費税率10%と軽減税率導入後は、⑥軽減税率の対象の印と⑦税率ごとの税込価格が加わった。そして今回、⑧適用税率、⑨税率ごとの消費税額、⑩適格請求書発行事業者の登録番号の記載の3点が追加されることとなった。

 

今回のポイントのひとつに、登録番号がある。これは、請求書を発行する事業者が国税庁に登録し発行された番号のことで、法人の場合は13桁の法人番号の前にアルファベットのTがついたものとなる。登録事業者を「適格請求書発行事業者」と呼び、預かった消費税から支払った消費税を差し引いた分を納税する課税事業者が該当する。すでに、約300万といわれる課税事業者の9割以上が登録申請を済ませている。

 

この制度のメリットは、課税事業者が仕入税額控除を適正に行うことが可能になることである。税率の異なる仕入れがあっても、消費税額が別記されているので、累計することで正確かつ効率的に計算できる。そして、税額が別記されたインボイスにより、業者間の取引における価格転嫁もスムーズとなる。これまで、仕入れ業者への圧力や、消費税分の価格転嫁問題が散見されたが、制度導入により減少することが見込まれる。また、益税といわれる国庫に納められるはずの消費税が納められず、事業者の手元に残る問題の解消にも役立つとみられている。現行では、免税事業者からの仕入れでも仕入税額控除が可能なので、免税事業者が消費税を負担していないにも関わらず、相手側はその分も控除が可能であった。この国庫に納められるはずの消費税が、事業者の手元に残る益税として指摘されており、今回の導入でなくなることになる。

 

また、インボイスをデジタル化することで金融機関と連携し、資金決済事務の合理化や受発注から入金チェック、記帳までのプロセス全体の効率化が期待できる。同時に、取引データがリアルタイムとなることでバックオフィスのみでなく、事業全体の生産性の向上も図ることが可能となる。インボイスのデジタル化で、経済全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)化の推進が期待される。

 

一方で、導入による免税事業者への懸念が浮上している。従来から課税売上高(税込)1,000万円以下の場合は、免税事業者として消費税の納税を免除されている。そのため、今回の適格請求書発行事業者としての登録ができず、インボイスの発行はできない。その場合、買主は免税事業者から購入した商品・サービスの請求書がないため、仕入税額控除ができないこととなる。つまり、免税事業者に支払った消費税は、全て買主の負担となってしまうこととなる。今後、仕入税額控除の適用ができない場合、利益への影響も考えられる。また、従前の取引に問題がないにもかかわらず、売主がインボイスを発行できないことを理由とした取引の打ち切りや、取引先が企業や自治体などの課税事業者の場合、取引に支障をきたす可能性も考えられる。免税事業者は、課税事業者になるのか、現状維持を選択することが今後、重要となる。当初は、免税事業者からの仕入税額の一定割合を控除できる経過措置により時間的猶予は与えられたものの、徐々にインボイスを発行できる事業者に置き換えられていく可能性が高い。現在、約460万の免税事業者のうち申請件数は、92万件にとどまる。取引先が大手企業の課税事業者で、将来にわたり事業が拡大するのであれば、自らもインボイスの発行をしたほうが有利となるが、ただ登録した場合、新たな納税義務が発生し、申告・納付に関する事務負担の増加や納税分が価格転嫁できるかという問題も浮上する。

 

過去にも税の制度改正は、経済全体に影響を及ぼすことがあった。免税事業者の動向など、インボイス制度の今後に注目したい。

(戸谷 慈伸)

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