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予算案と財源 (2023年2月版)

利上げにより米国景気が減速する中、日本は金融緩和継続でマーケットの見通しには不透明感が続いている。3月が黒田総裁最後の決定会合となるだけに、今後の政策運営には引き続き注目が集まる。

 

昨年末、 2023 年度予算案が閣議決定された。一般会計の歳入・歳出規模は、 114.4 兆円と前年度比6.8 兆円増加し最大となった。近年の増加は社会保障費中心であったが、今回はコロナ、物価高、ウクライナへの対策費に加え、防衛関係費の増額により予算額が拡大した。防衛関係費は、前年比4.6兆円増と増加額の約7割にあたり、うち1.4兆円が23年度分で残りは、23~27年度の防衛力強化資金(仮称)に繰り入れられる。

 

予算段階の歳入は、足元の税収が4.2兆円増えるなか、国債発行額は1.3兆円に抑えられ、公債依存度は31.1%と16年ぶりの低水準となる。歳出の防衛関係費は、外国為替資金特別会計の繰入金3.1兆円、財政投融資特別会計の0.6兆円、コロナ予算などの国庫返納分0.4兆円、「大手町プレイス」の保有分売却0.4兆円などで充当される。そのほか社会保障関係費は、高齢化による自然増と年金額に反映される物価上昇分で増加し、地方交付税交付金や債務残高の増加に伴う国債費も増加する。また、文教科学振興費、公共事業関係費は横ばいで、予備費は通常分と、新型コロナ、原油価格対策、ウクライナ情勢経済緊急対応予備費として計 5.5 兆円が計上された。骨太方針の脱炭素投資は、特別会計により23 年度分はグリーンイノベーション基金に0.5 兆円を追加、GX 予算は22 年度補正予算で 1.1 兆円計上し、「GX 経済移行債」発行による調達を予定している。

 

今回の防衛費は、先に閣議決定された中期防衛力整備計画で27年度までの5年間で43兆円(現在の防衛費を含む)の予算支出計画で、前回に比べて約1.6倍に増額された。増額分の財源確保には、27 年度以降年3.7 兆円必要となるため、増税、防衛力強化資金、決算剰余金、歳出改革の 4 点で補われる方針である。増税は、公表された税制改正大綱では法人税、所得税、たばこ税増税で1 兆円強を確保する方針で、実施は、24 年以降のいずれかのタイミングでの実施と記されている。防衛力強化資金は、税外収入により財源確保を行い、外為特会剰余金や財投特会からの繰り入れ、予備費の返納、国有財産の売却収入で賄う。決算剰余金は、過去 10 年平均の半額を財源とし、残りを公債・借入金の償還財源に充てる。歳出改革については、社会保障関係費以外の抑制に努めることで確保する計画である。注意点は、 5 年の増額分は決定されたがその先が決定していない点や、決算剰余金を余る前提で組み込むという対応が取られたことであるが、今回は、赤字国債発行や消費税増税は見送られる格好となっている。

 

しかし、「異次元の少子化対策」を掲げる岸田首相には、子ども予算の倍増に向けた議論も控えており、今後の財源確保は避けて通れない。そのため、再びこども保険や社会保障費との紐づけした消費税増税も選択肢から外しきれない状況にある。24 年に自民党総裁任期と、25 年衆議院任期と参院選の改選が予定されるだけに、今年の統一地方選の動向を見守りつつ実現を目指すこととなる。

 

コロナ拡大以後、補正予算規模は拡大傾向にある。本予算は、将来に向け継続的な実施を見込む政策で、財務省の査定により財政規律は保たれているが、補正は年 1 回限りの緊急対応という考え方から積立金や基金の積み上がりや病院への補助問題など、再考の余地が残されている。ちなみに22 年度第二次補正予算の規模は 28.9 兆円で、補正後の予算規模は 139.2 兆円と、当初の 107.6 兆円から 29%増加した。21 年度は106.6 兆円から、144.6 兆円に、20 年度は、102.7 兆円から 3 度の補正を経て、決算ベースで 147.6 兆円まで増加している。

 

財源のひとつとなる国債には、利払い費の問題が存在する。利払い費は、残高が増加するなか15 年度から、21 年度まで 6 年連続で減少したが、22 年度は発行残高が 52 兆円増加し、利払い費は7.3 兆円の微増となった。近年、日銀の政策により恩恵を享受してきたが、財務省の25 年度までの影響試算では、想定金利が 1%上昇した場合、国債費は 25 年度に 3.7 兆円上振れするとの試算も示されており、小幅の金利上昇でも、利払い費は膨らみやすい状態にある。

 

今年は、日銀の金融政策の行方に注目が集まる中、改めて岸田首相の政策手腕が問われる年となりそうである。

(戸谷 慈伸)

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