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温暖化ガス実質ゼロ化へ (2020年12月版)

注目の米大統領選挙結果とコロナウィルスワクチンの開発報道により、世界の株価は大きく上昇した。日経平均株価は10月末の23,000円割れから一転、11月17日には1991年5月以来、約29年7カ月ぶりの 26,000円台を回復した。

 

ワクチンによる経済活動の正常化期待や、選挙前に懸念された「トリプルブルー」が実現せずに、民主党の過半数確保が下院のみというねじれ議会の結果が背景と分析される。市場が警戒した大型増税、IT(情報技術)や金融規制などの議会通過の可能性も遠のき、追加経済対策議論の前進への期待が株価に反映されている。出遅れた投資家による押し目買いが相場を支えている中、過熱感を感じ取る投資家も存在し、米政局の不透明感の再燃や、新規感染者数の予想外の急増による反動も考えられ、今後も警戒は怠らないようにしたい。当面は、世界の低成長・低金利の長期化を前提に、バイデン氏の国際協調の枠組み重視の姿勢を先取りする形で、日本企業への恩恵も期待され、株価に反映されつつある。

 

10月の菅首相の所信表明演説では、新型コロナ対策と経済の両立、行政・民間のデジタル化推進と同時に、温暖化ガス排出量を2050年までに実質ゼロとする新しい目標が掲げられた。以前は80%削減、実質ゼロ化は21世紀内にとどまっていたが、EU(欧州連合)や中国が実質ゼロ化の目標強化を掲げ、日本も同様に踏み出した格好だ。EUはいち早く中間目標を議論、議会・欧州委・加盟国協議で合意形成を目指している。4月にオーストリアとスウェーデンが脱火力発電を実現、22年にはフランスが予定している。中国は、60年に二酸化炭素ゼロを目標に掲げ、35年をめどに全新車販売を環境対応車にし、水素エネルギーのインフラ整備に注力する。米バイデン氏も来年の大統領就任初日に、パリ協定への復帰宣言を予定しており、4年間で2兆ドル規模の環境インフラ投資を掲げている。

 

菅政権的には携帯料金引き下げ、デジタル化の順となりそうだが、所信表明への組み入れからも世界の潮流として注目しておきたい。現状、50年に80%削減も容易な目標ではなく、実質ゼロに向かうハードルは高い。道筋としては、再生エネルギーの主力電源化とエネルギーの電化比率の引き上げが想定される。再生エネルギーの主力電源化は、太陽光による容量の拡大が進む中、新たに洋上風力にも期待が寄せられている。安定電源化のための蓄電技術の進歩とともに、コストも着実に低下している。今後は電気自動車などの普及によって、家庭内蓄電池のコストメリットが20年代にも実現する可能性もある。

 

脱炭素は地球温暖化対策と同時に、日本のエネルギー輸入依存からの脱却と、地産地消という国家安全保障上のテーマでもある。同時に、地域創生にもつながるビッグプロジェクトであり、太陽光・風力・地熱など地域の特性に適した手段・立地で開発し、地産地消化が進めば、遠距離による配電ロスや広域送電網のコストも抑えられ、災害時対応や新事業・雇用創出など、地域経済活性化の可能性を秘める。大規模発電による集中型電源方式から分散型への移行が叶えば、経済的にも大きなプラス効果をもたらすことが期待されよう。分散型移行への条件としては、安定供給の確保が必須だが、容量の拡大には、リチウムイオン電池以外にも全固体電池の開発や、水素による電力貯蔵技術などの技術開発が、集中電源の効率化には、直流送電なども注目される。

 

政府・与党は、温暖化ガス削減につながる製品の生産設備への投資に対する優遇税制導入と、研究開発支援基金の創設を検討し、税制大綱や第3次補正予算に盛り込む考えである。風力発電、次世代リチウムイオン電池、パワー半導体分野の技術革新を促し、水素、蓄電池、カーボンリサイクル、洋上風力の研究など、広範囲にわたる支援を行う予定だ。

 

世界の環境対応に背中を押される形ではあるが、日本の資源・エネルギー対策も新たな段階へと進むと考えたい。再生エネルギーという国内資源への移行は、環境のみならず経済・雇用面にもプラス効果を期待できるだろう。

 

(戸谷 慈伸)

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