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注目の米国大統領選挙 (2020年10月版)

突然の安倍首相辞任を受け、菅政権の発足となった。8年弱のアベノミクス(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を誘発する成長戦略)を柱とした政権への評価は後の機会として、政権運営が大きく転換することは今のところ想像しがたい。やはり現時点のマーケットの注目は、アメリカ大統領選挙ではないか。

 

11月3日の大統領選までおよそ1か月、世論調査では民主党バイデン前副大統領リードの様相だが、トランプ大統領も猛追しており、行方は混沌としている。先例では株式市場は民主党政権を嫌う傾向にあるが、中道左派の同候補に決まった時点で、市場の懸念は後退し、マイナス面とプラス面が拮抗するとの見方が多い。トランプ大統領再選時は、政策が継続されることを前提に政策の違いを以下で比較したい。

 

バイデン政権の場合に大きく政策が変わるとみられる一つは、環境政策である。同氏はパリ協定への復帰を明言しており、地球温暖化対策とインフラ投資に4年間で2兆ドルを投じる政策案を発表、2035年までに電力部門の温室効果ガス排出量をゼロに抑えるほか、交通網などインフラの刷新、電気自動車の普及促進などを掲げている。となれば、トランプ政権が支援するエネルギー産業には逆風となることは確実で、幅広い企業にとっては短期的なコスト増の可能性はある。

 

貿易政策では、中国に対しては双方とも強硬姿勢である。関税引き上げによる圧力と保護貿易のトランプ流に対し、TPP(環太平洋経済連携協定)への復帰を選択するとみられ、自由貿易政策への回帰を米国にもたらすことが考えられる。ただ、通商交渉は議会の権限であり、選挙において両院とも民主党が多数を占める場合に限られる。日本は、トランプ大統領再選時に中国同様、日米交渉第二弾を要求されることも想定されるが、バイデン氏の場合は、国際的枠組みの中での要求に変わることが想定される。

 

バイデン陣営は、地球温暖化対策に加え、富裕層増税、法人税率引き上げや公的医療保険拡充などの左派的経済政策を掲げている。しかし、米企業や株式市場への影響も考え、政府による4,000億ドルの米国製品購入や、3,000億ドルの5GやAIへの研究開発投資の検討を明らかにして、不安の軽減に動いている。法人税率引き上げも比較的穏やかにとどめる見通しで、引き下げられた半分程度に抑え、劇的変化は考えていない。当面はコロナ対策が中心となり、景気への配慮からも増税、法人税や公的医療保険拡充の実施は先送りされる可能性も考えられる。

 

トランプ大統領は、ドル安志向からFRB(連邦準備制度理事会)に対して利下げ要求など露骨な介入を繰り返し行なった。リーマンショック後のオバマ政権下でも銀行規制が強化されたが、バイデン政権のFRBに対する要求はそれほどではなく、銀行への風当たりは弱まりそうである。FRBへの介入は、中央銀行の独立性や、通貨価値や金融市場の安定を損なう恐れがあり、株式市場にとっても不安要素であった。FRBの見通しでは、23年末ごろまでゼロ金利政策維持を示唆しており、2.0%成長が安定的に推移することを確認するまでは維持される見通しである。

 

正・副大統領、下院全議席と上院の35議席(補欠選挙含む)が改選される予定の今回は、コロナウイルスへの対応や、ミネソタ州での黒人窒息死に端を発した人種差別反対運動問題が、共和党には向かい風の様相だ。92年の現職ブッシュ大統領(父)落選時は、高失業率と景気回復の実感不足が敗因の一つといわれており、足元の失業率は低下方向だが水準は高く、トランプ大統領の多難は続きそうだ。選挙後の混乱も無視できない。コロナによる郵送での不在者投票が増えた場合、開票作業に時間を割き、予備選挙の結果が遅れる可能性もある。株式市場は、政権交代よりも滞りなく選挙が終了しないことに懸念を示すことも考えられる。

 

11月3日の直前、直後まで雌雄が明らかにならないことも視野に入れつつ、投資のタイミングを注意深く見守る時と考えられる。

 

(戸谷 慈伸)

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