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望まれる新型コロナウィルスの終息 (2020年4月版)

本誌1月号で年末の日経平均株価見通しを25,000円と記したが、新型コロナウィルスの影響により修正すべき状況へと内外の様相は一変した。

 

中国発の感染によって、日経平均株価は下落基調を辿り始めた。その後世界的に拡大、影響は増幅され、3月にはダウ工業株30種平均がつるべ落としの如く20,000ドルを割れるなど、世界的にリーマンショック以来の大幅な株安となった。為替も国際決済銀行公表のドルの名目実効レートが、34年ぶりの高値になるなどドル買いが拡大した。また、新興国のドル建て債務も10年前の2倍以上に膨らんでいる中、返済能力やドル調達への不安、観光客の減少などから通貨下落に追い込まれている。そして、同時に起きた原油価格の急落も、石油輸出国であるアメリカの景気とクレジット市場への影響を注意すべき事態を招いている。

 

米FRBの連続利下げにより、10年国債利回りは過去にない1.0%を下回ったが、コロナウィルスに対する不安は投資家を金、国債さえも売却する現金化(逃避)に走らせている。08年のリーマンショックは、住宅バブル崩壊による米大手証券の破綻を発端にした金融システムの急速な収縮が、企業活動に影響を及ぼした。今回は、世界的な渡航・移動の禁止が観光、輸送、飲食業を直撃し、生産・消費活動のサプライチェーンを急停止に陥らせた。結果、生産停止や店舗閉鎖など、感染防止措置が企業の売上の急減を招き、急速な業績の悪化や資金需要を招く緊急事態となっている。

 

現在、日・米・欧とも政府と中央銀行が、協調して難局に立ち向かっている。金融と財政の両輪から、徹底的な資金供給と信用供与、企業の資金繰り支援と家計への現金給付など、当面の危機を肩代わりすることにより、世界経済の底割れの防止に尽力している。

 

今後の新型コロナウィルスの動向と影響(①拡大ペース、②期間、③地域的拡大)が最大の注目点であるが、参考とする03年のSARSは、WHOの喚起から約3か月後に新規感染者がゼロとなり、7月に終息宣言が発せられた。同様の期待では、4~6月の終息が待たれるが、未解明の部分も多く、拡大規模を考えると、長期化リスクも現時点では排除できない。

 

今回の世界的感染拡大は、今後のグローバル化の流れに対し、障壁として立ちはだかる懸念が予想される。ブレグジットや、トランプ大統領の自国優先的行動に加え、米中による貿易交渉で様々な壁の存在を意識し始めたが、今回のコロナショックも人、モノ、カネの動きや国境通過の妨げとして、沈静化後も障壁となる恐れとなるのではないか。また、中国の2月のPMI(購買担当者景気指数)や米アップルの売上未達報道を皮切りに景気悪化のシグナルは、日本車の世界生産台数の一時的半減など、今後の生産体制見直しにも影響するのではないか。また、それは世界各地の生産要素(設備、労働力)へのストック調整圧力になることも懸念されよう。

 

日本も、企業の1ー3月期業績への影響は不可避であり、4-6月期まで影響を及ぼすことも推察される。企業の生産性低下や設備投資抑制に加え、インバウンドの不振、スポーツはじめ各種イベント、レジャー施設の延期や中止、外出自粛による国内消費需要の落ち込みが影響を及ぼすであろう。18年GDPの約54%を占める家計消費のうち、サービス消費は約半分を占める。増税後の19/10-12月期実質GDP成長率(2次速報)は、実質▲1.8%(年率▲7.1%)のマイナス成長で、1-3月期も2四半期連続のマイナスが避けられない。政府の月例経済報告も総括判断が下方修正されたのに伴い、大型補正予算やキャッシュレスポイント還元延長、現金給付など、家計負担への援助の検討が急がれる。

 

世界最大のイベントである東京オリンピックの延期が決定した。試算では東京オリンピックの経費が約1兆3500億円、需要増加額が約14兆円(直接的2兆円、レガシー12兆円)、経済波及効果が東京約20兆円、全国約32兆円と見込まれていただけに、約3000億円の追加費用が必要の見通しだが、安堵されよう。

 

現時点では年末の日経平均株価予想は引き下げざるを得ないが、暗い話ばかりではない。株価水準は、日経平均採用で予想PER11.31倍、PBR0.88倍、配当利回り2.72%(3/24時点)であり、株価も年初の高値より25%以上下落している。押し目買いを入れる水準と言えよう。

 

経済の問題だけではない、新型コロナウィルスの早期終息を切に願いたい。

 

(戸谷 慈伸)

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