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注目されるESG投資 (2019年5月版)

「Enviroment(=環境)」「Social(=社会)」「Governance(=企業統治)」の頭文字を採ったESG投資が昨今、注目されている。2006年、国連アナン事務総長による「責任投資原則(PRI)」の提起にはじまり、18年4月時点で世界の2千近い年金基金や運用会社など機関投資家が署名、投資額も年々増加している。欧米をはじめ各地域で拡大を続けており、運用資産残高は約19兆ドル近くに達し、注目すべきテーマのひとつと考えられる。

 

従来、投資を行う際、企業の価値を測る材料としてキャッシュフローや利益率など定量的な財務情報が重視されてきたが、加えて非財務情報の要素、環境では気候変動や生物多様性、社会ではサプライチェーンやダイバーシティ、そしてガバナンスでは取締役会の構成や少数株主保護などESGの要素が考慮され始めている。17年12月、日本取引所グループは、サステナブル投資の促進及び、ESG項目に関する企業の透明性や長期的パフォーマンスの向上を図ることを目的とした取引所のグローバルネットワークに参加。取組みを推進するため「サステナビリティ推進本部」を設置、運営を始めている。取引所は、上場会社には株主以外にも重要なステークホルダー(利害関係者)が存在し、適切な協働によって自らの持続的な成長と中長期的な企業価値創出が達成できるとして、ESG問題への積極的かつ能動的な対応が企業に対して求められると、ガバナンスコード向上の中で提唱した。18年5月現在、ESG関連指数連動型ETFは17本上場しており、ESG投資への推進を明確化していると考えられよう。

 

また、同年7月には、年金積立金管理運用独立行政法人(以下GPIF)がESG3分野総合指数・社会指数への投資を表明。17年にはパッシブ運用中心に、1.5兆円の資産が振り向けられることとなった。GPIFはこの三要素に配慮した投資は、期間が長期にわたるほどリスク調整後のリターンを改善する効果が期待されるとし、長期的な観点からも受託者責任を果たすことが出来る投資手法であると考えている。

 

投資家が長期にわたって安定したリターンを確保するためには投資先企業の価値が持続的に高まる事が重要であるが、資本市場においては環境問題や社会問題等の影響を取り除く事はできない。さればこそ、こうした問題を最小化する企業姿勢が社会全体の持続可能性を高め、長期の投資リターンを期待する上で重要となるだろう。元々が海外でESG投資は重視されていただけに、海外の長期投資家も日本企業の取組みに着目すれば、短期的ではなく長期保有を前提にした資金流入が進み、将来的な日本株の投資収益(パフォーマンス)改善に期待することになるであろう。利益などの財務諸表が過去の成績として企業を評価するのに対し、非財務情報のESGに優れた企業は社会の発展に貢献し、将来的にも持続的に成長するという理念が根底にはあるからだ。投資家に対するプレゼンスの向上や、将来、潜在的なリスクに対応し、企業価値の毀損を防ぐものとも考えられ、長期的なリターンを考える際にはESG要素の高い企業への投資の方が勝ると考えられよう。

 

海に漂流、蓄積した5ミリ以下のプラスチックの破片(=マイクロプラスチック)が海の生態系に大きな影響を与える可能性があるという問題が耳目を集めている。18年6月にカナダで開催されたG7において、「海洋プラスチック憲章」が採択され、主な内容として、30年までにプラスチック用品を全て再利用可能あるいはリサイクル可能なものに転換する。同年までに可能な製品について、プラスチック用品の再生素材利用率を50%以上にあげる、などが採択された。米スターバックス、米マクドナルドなどプラスチック製ストローの廃止を表明した外食企業も現れ、単に環境や社会の問題ではなく企業側の環境や社会への配慮が消費者の嗜好や規制に対応した変化のはじまりであり、ビジネスや社会の枠組みの変化の兆しではないだろうか。

 

投資家は投資先の企業価値に常に注目している。しかし、一般的なバリエーション(評価基準)であるPBRを見てみると、東証1部上場企業のPBR(1株あたりの純資産倍率)は約4割の企業が1倍を下回っている。通常であれば割安株として、水準訂正が起こりうるはずだが、投資家は純資産以上の価値を求めていると思われる。人材、研究開発力、ブランド力といった数字には表せない部分や未来への企業活動が重要と考えられ、今後、ESG課題への適切な取組みが企業価値の、そして株価の向上に不可欠と考えられるのではないか。

 

(戸谷 慈伸)

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