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サプリメント相場の行方 (2017年6月版)

日本株の最大の買い手はどこであろうか。それは海外投資家であった。1991年~14年(暦年ベース、東京証券取引所資料より)まで海外投資家は日本株を89兆8,636億円(年平均3兆7,443億円)買い越しており、日本株全体に占める金額ベースの海外投資家の株式保有比率は29.8%(16年3月末時点)になっている。しかし、15~16年では3兆9,398億円の売り越しに転じており、買いの主体は大きく変化している状況だ。

 

海外投資家に代わって日本株の大きな買い主体になっているのは、①信託銀行(14~16年の買い越し金額・8兆574億円)、②事業法人(同6兆2,887億円)、③証券会社の自己部門(同4兆2,597億円)になっている。信託銀行の売買は公的年金・企業年金の基金が主体になっており、日本の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の存在が大きいといえる。

 

GPIFの運用資産に占める国内株式の基本資産配分は13年6月に従来の「11%」から、「12%±6%」になり、14年10月の新基本ポートフォリオでは「25%±9%」に引き上げられている。これにより買い余力の増したGPIFは日本株における存在感を高めており、16年12月末時点のGPIFの運用資産額全体に占める国内株式保有比率は23.76%、同保有残高は34兆4,053億円になり、巨額な数値になっている。

 

事業法人は上場企業の自社株買いが主体だ。現在、前述にあるように海外投資家の上場企業全体に占める株式保有比率は30%弱になっており、上場会社は海外投資家等からROE(自己資本利益率)の向上を強く求められる状況にある。ROEは純利益を自己資本で割った数値だが、ROEを高めるためには利益を伸ばすか、自社株買いをして自己資本を減らす事が肝要であり、自社株買いは今後とも継続的に増大する事が予想される。

 

証券会社の自己部門が大きな買い手になっているのは、証券会社が自己で株式を買いETF(上場投資信託)を組成して、それを日本銀行が購入する事によるものだ。16年7月に一連の金融政策を一段と強化するためにETFの保有残高を従来の約3.3兆円から、ほぼ倍増となる「年間約6兆円」(毎月平均では約5千億円)に相当するペースで増加するよう買入れを行う事を発表している。

 

16年9月から17年4月までの投資部門別株式売買状況(東京証券取引所資料)は、海外投資家・9,102億円の買い越し、信託銀行・9,179億円の売り越し、事業法人・8,048億円の買い越しになり、最近は買い手としての存在感が低下する傾向にあるが、証券自己部門は5兆5,309億円の買い越しと一段と存在感が増大している状況だ。日銀は毎月平均約5千億円、年間6兆円のETF(日本株)を買う予定になっており、直近の日本株の最大の買い手は日本銀行になっている。

 

国内株の保有残高は日本銀行が13兆6,827億円(今年4月末)、GPIFは34兆4,053億円(16年末)になり、さらに現時点で日銀は年間6兆円増加するペースでETFを買う予定だ。仮に日銀が年末まで今のペースでETFを購入した場合、今年末の日銀の日本株保有残高は約17.7兆円になり、GPIFの現在の保有残高と合計すれば52兆円を超す金額になる。日本の中央銀行である日銀と国民の年金積立金を運用するGPIFで国民1人当たり約41万円、4人家族では164万円超の日本株を間接的に保有する事になる。

 

直接、株式を保有していなくても日銀とGPIFのみで、これだけの規模の国内株を保有しているという重い現実を安易に見ないほうが良いのではないか。「株式は上がりますか」という質問をよく受けるが、短気的な値動きは別の問題として、長期的に日本株が上がらなければ日本経済や国民の暮らしは、大変な打撃を受ける事になると危惧している。

 

先月号の当コーナーでご案内した通り、PER(株価収益率)は米国株の水準を下回っており、PBR(株価純資産倍率)は米国の2.8倍台に対して、東証1部平均で1.2倍台、実質配当利回りも米国のゼロ%程に対して、東証1部加重平均で1.7%台になっている。サプリメントとは健康補助食品とされているが、日銀やGPIFの買いはサプリメントの役割を担っていると思われる。相場には「国策に売りなし」という格言がある。日本株の投資指標の健全化数値は米国を上回っており、米国株のように長期上昇波動の気流に日本株を乗せる事は可能だと推察している。
(北川 彰男)

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