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個人金融資産の行方 (2024年2月版)

年初から日経平均株価は、騰勢を強めている。能登半島地震による景気下振れ懸念を背景に、日銀の金融緩和維持とマイナス金利政策解除の先送りと、その後も緩和的な環境が続くと市場参加者は予想しているようだ。

 

昨年末発表された、日銀の7-9 月期資金循環統計(速報)によれば、季節調整値で家計部門の資金余剰幅は大きく拡大した。 9 月末時点の個人金融資産残高は、前年比 101 兆円増の 2,121 兆円となり、4 四半期連続で最高水準を更新した。年間でも、株高などによる時価変動の影響で82 兆円(うち国内株式等 65 兆円、投資信託 9 兆円)増加し、個人金融資産残高を押し上げた。また、資金の純流入も 19 兆円と4 四半期連続で増加した。例年、ボーナス期と違い7-9 月期は純流入しにくいが、株価上昇や円安による時価変動の影響が押し上げる格好となった。しかし、物価上昇率が例年より高めに推移しており、その分個人金融資産の実質的価値(購買力)は目減りした。上昇率の影響を加味すれば小幅な増加にとどまり、金融負債の増加分も加えると、資産が増加した感覚は薄いとみられる。また、例年でも現預金の取り崩しが起きやすい時期のため、昨年は、コロナ5類移行による外出・レジャー再開により流出規模は 4.4 兆円と前年同期(2.7兆円)を大きく上回り、過去最大となった。 10-12 月期は、ボーナス月を含むため、国内株や円相場による変動の影響を加えても、12 月末時点の個人金融資産残高は 9 月末からさらに増加し、連続して過去最高を更新する見通しである。

 

そんな中、個人金融資産の動きにはインフレに弱い預金、即ち低金利を避ける動きがみられる。株高等による分母上昇の影響もあるが、現預金が個人金融資産に占める割合は 52.5%と 2018 年 9 月以来の水準に低下しており、定期性預金からの純流出は 31 四半期連続、累計で 96 兆円に達する。結果、定期性預金が個人金融資産に占める割合は 17.2%にまで低下、預金金利はほぼゼロに近いため、資金流出に歯止めはかかっていない。日銀による長期金利操作目標の許容上限引き上げで、定期預金金利引き上げの動きも見られるが、上昇幅は限定的で依然として流出は続くとみられる。

 

また、リスク性資産に目を向けると、株式等は 14 億円、投資信託は 2.0 兆円純流入となった。純流入の規模は 2015 年 4-6 月期以来となり、中でも投資信託は 14 四半期連続純流入と、積み立て NISA など積み立て型投資の普及とともに、純流入額は合計 17 兆円と息が長い。対外証券投資(米国株など)は、 0.3 兆円の純流出、外貨預金は 0.1 兆円純流入となった。従来、円安傾向の場合、利益確定的な解約が優勢だが、海外金利が上昇を続け、高金利を目的とする流入も目立ち始めている。確定拠出年金内の投資信託も純流入を続けており、預金金利より金利優位にある国債(主に個人向け)でも 1.2 兆円の純流入と 3 期連続で純流入となった。

 

そのなかでも、投資信託への純流入は際立つ。12月に投資信託協会が発表した11月末現在の数字では、公募投信の純資産総額は、過去最高の195兆2,331億円(うち株式投信179兆7,637億円)となり、19年連続(株式投信は、25年連続)で純資金流入している。株式投信の2022年までの10年間の平均純資金流入額は、8兆2,922億円で、昨年11月末時点で7兆5,354億円流入した。また、ETF(上場投信)の純資産総額も過去最高を更新中である。株式投信は、インデックス型(日経平均など市場の値動きを示す指数に連動するもの)が58.7%、ファンド・オブ・ファンズ(運用タイプの異なる様々な投資信託を組み合わせて一つにしたもの)が17.2%で、過去人気を博した毎月決算型は12年前の67.5%から11.6%に低下している。ちなみに個人金融資産における投信の割合は、9月末4.8%で主要国の水準と比較すると依然低い(米国11.9%、ユーロエリア10.1%)。

 

個人金融資産全体から見ればまだ限定的な動きだが、リスク性資産への投資の拡大が確かなものとなってきたようだ。物価上昇による資産価値目減りへの対応や、NISA 枠拡充による投資への注目度向上から、今後ますます、家計の投資意欲が高まり、リスク性資産へのシフトが加速するか注目したい。

(戸谷 慈伸)

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