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ChatGPT(チャットGPT) (2023年6月版)

5月、日経平均株価、TOPIXともに、約33年ぶりにバブル後の高値を更新した。節目を越えたことで、今後は持続力が試される展開に注目が集まる。

 

連日、AI(人工知能)のひとつChatGPTが新聞紙面に取り上げられている。ChatGPTとは、米マイクロソフトの出資するオープンAI社が、昨年11月に公開した生成AIのことで、学習した大量のデータをもとに人間が行うような文章や、画像や音楽の作成を可能にする。話し言葉で質問や指示するだけで、自然な文章で答えることが特徴で、その性能と可能性が注目を集め、早くも全世界の利用者が推定1億人を超える。日本でも4月以降大手金融機関や商社が導入を検討、複数の企業がChatGPTの技術を基にしたシステム開発を表明している。

 

以前より対話型AIは存在していたが、質問に対する回答はあらかじめ用意されており、記憶されていない質問には不自然なケースが珍しくなかった。それに対し、ChatGPTは日本語も含む複数の言語を認識、人間らしく応答するよう設計されており、無料で利用できるサービスの中では革新的として、話題となっている。

 

ChatGPTは、オープンAI社開発の言語モデルによって、人間の話す言葉を膨大なデータから学習する深層学習機能を搭載し、学習内容を元にして与えられた要求を実行する。大量のデータを学習すればするほど、人が書いたようにリアルで自然な文章を生成する。文の始まりから、次に来る可能性が最も高い単語を予測する仕組みのため、事実と反する回答になるケースや情報の正確性に欠ける点には注意が必要となる。

 

主な活用法には、ユーザーの問いかけや設定条件を元にしたテキストの生成がある。内容が曖昧でも、テキストは具体的なものとなり、文字数や文体などの条件設定により簡単な文章作成や、書類などの骨組みとして精度の高い文章を生成する。内容の矛盾も少なく、AIが生成したとは思えない自然な文章が返ってくる。

 

つぎに、チャットボットで利用される質問への回答・質疑応答である。概念的な質問への回答をはじめ、やりとりを踏まえながら質問を繰り返すことでより適切な回答を行う。

 

3つめが翻訳である。言語は100以上あり、今後も追加予定で翻訳したい文章と言語を入力するだけで翻訳し、1度では不自然な内容も再度依頼することで、自然な言語に近づけることができる。質問内容を具体的にするほど、それに応じることで誤訳や訳抜けの検出、訳文の校正、用語集や例文の作成ができる。

 

そのほかにも表計算の関数入力や、プログラミングのコード記述、既存テキストの要約、ChatGPT自身が生成したテキストを要約することもでき、レポートや原稿の見直しにも利用される。今やこの利用方法に対し、米国をはじめに論文やレポート、脚本、作曲などの分野の問題として浮上している。

 

注意すべきは、前述どおり正確性に欠けるため、ファクトチェック(事実関係の確認)が必要と考えられる。ChatGPTの文章は、インターネット上のデータから生成されるため、必ずしも正しい答えが返ってくるとは限らない。情報は過去のインターネット上の内容のため、変更済みの場合や、元の情報が間違っている可能性が否定できない。たとえば、おすすめの食事処を質問し、回答には複数挙げられるものの、すでに閉店している場合や、直近の出来事に関する質問には回答できない場合がある。また、少数の専門家だけが持つ専門性の高い質問や、必ずしも答えが1つとは限らない質問、臨機応変な対応が求められる場面では、適切な回答が返せない可能性がある。しかしながら、そのような不完全さが認識されながらも、あらゆる業界や業務に活用され、社会を変える可能性を秘める。

 

業界別にも、様々な活用例が考えられている。医療では、診断書などの文書作成や患者のサポート。金融では、リスク分析や対応策の提案、契約書の要約や分析など。小売りでは、カスタマーサポートや製品情報の提供。IT業界では、システム運用の問い合わせやトラブル発生時の自動対応、開発業務の効率化など、新たなデータを学習し深層化することで、精度や応用範囲の向上が期待されている。

 

今後、ますますの精度向上で、その影響の拡大と利活用の範囲は計り知れない。現段階では倫理的な部分や法整備も含めてG7の議題に上がるなど、土台自体が手探りの状態である。今後の動向に対する注目度は高い。

(戸谷 慈伸)

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