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改革が期待されるNISA (2022年10月版)

インフレ回避をめざす米FRBは、3会合連続で0.75%の利上げを実施した。金融引き締めの長期化によって、米株式市場は経済的ダメージを懸念しており、今後の景気の行方と企業業績への影響が注目される展開となった。

 

8月末、金融庁より来年度の税制改正におけるNISA (少額投資非課税制度)の改正と、拡充を求める要望書が提出された。17年度から20年度までNISAの恒久化を要望したが実現しておらず、同庁は金融教育の推進とともに制度の改正を求めている。岸田政権の「資産所得倍増プラン」に沿う形で制度改正と拡充が目指されるが、首相の講演からもプランの内容に織り込まれる可能性は高いとみられる。

 

制度改正は、NISAの仕組みの分かりづらさが投資に二の足を踏ませるとの考えから、「簡素で分かりやすく、使い勝手のよい制度」への変更が明記された。現行NISAには、様々な課題が指摘されており、中でも非課税期間や新規の投資可能期間の制限などがあげられており、安定的資産形成を促す観点からも長期・積立・分散投資のつみたてNISAをベースにしながら、年間投資枠と非課税限度額の拡大が求められている。

 

周知のとおり、通常、金融商品の利益には20.315%の課税が実施される。NISAは、上場株式や幅広い株式投資信託での運用に対して、配当や売却益は非課税となる。現在は3種類あり、上場株式中心に年120万円を上限に5年間投資できる「一般NISA」。基準を満たした投資信託や、ETF(上場投資信託)を対象に年間40万円を上限に20年間投資できる「つみたてNISA」。そして、未成年を対象とする「ジュニアNISA」である。金融庁の利用状況調査では、22年3月末時点での口座数は、約1,780万口座(一般11,124,332、つみたて5,869,555、ジュニア800,143)で、利用買付額合計が約27兆6千億円におよぶ。現時点ではジュニアNISAは来年で終了し、一般NISAは24年から新制度に移行する予定となっている。

 

現在の一般NISA制度では、5年の非課税期間の間に上昇した場合、下落リスクを避けようと短期売却する人も少なからず存在する。新規投資可能期間は、24年以降に引き継がれる新NISAを含めても28年まで、つみたてNISAも新規投資期間は42年が期限となる。投資枠は、一般NISAとつみたてNISAを毎年どちらか選択する必要があり、一般NISAの枠で年120万円までとなっている。一般NISAの非課税運用を継続する場合は、5年間保有後の翌年枠に資産を移すロールオーバーの手続きが必要で、24年からの新NISAでは「2階建て」の構成に変わる。これは原則、1階部分で積み立て投資をした場合にだけ2階部分を使い株式などに投資できる仕組みが予定されており、新NISAへのロールオーバーのルールが複雑になっている。

 

今回の金融庁による改革案は、こうした課題の解決を目指しており、同時に、制度の恒久化と非課税期間の無期限化、つみたてNISAの対象年齢を未成年者にまで引き下げることなどが要求されている。導入が期待される総合NISAに対する考え方は、中心部分はつみたてNISAの基本「長期・積立・分散」を土台にしながら安定的に増やし、希望者が一部を個別株投資によるリターンの底上げを試みる方法で、年金など長期投資家のコア(中核)・サテライト(衛星)戦略と同じ手法である。複雑化させていたロールオーバーも、恒久化となれば不要となり、非課税枠は現行では売却後に消えてしまうが、総合NISAでは復活も検討されており、もし決定すれば24年からの導入となり複雑といわれた2階建て新NISA案は撤回されることとなる。

 

将来にむけて貯蓄から投資へと向かい、個人が投資の果実を享受し、資産や所得の増加を実現していくためには、NISA制度の見直しや金融教育の強化は欠かせない。また一方では、日本経済や企業の成長による収益の増加が、個人の投資に対して配当や株価上昇という形で応えてもらえるとの期待が高まらないことには、個人は日本の株式への投資を積極化させない。同時に企業自身も先行きの成長期待が高まらなければ、資金を積極的に設備投資などに回し、収益の拡大につなげる好循環が生まれてこない。

 

日本経済と投資の好循環が生み出されるためにも、来年にかけて検討されるNISA制度の改革の行方を見守りたい。

(戸谷 慈伸)

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