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岸田政権の推進力に期待 (2021年12月版)

米国株は、景気回復期待から高値圏を続けていたが、新型コロナウィルスの新変異型発見を機に感謝祭明けから今年最大の下落幅となった。一方の日経平均株価は、選挙明け後も往って来いの往来相場を続けている。

 

先の衆議院選挙で、自民党は国会の安定多数261議席を確保し第二次岸田政権が発足した。与野党ともコロナ対策の議論に終始した印象が強いが、今後は、法案や予算成立の円滑化から政策の迅速な推進が期待される。

 

首相は新しい資本主義会議において、掲げる成長戦略「成長と分配の好循環」で生産性を向上させ、果実を賃金として分配、国民の所得水準を伸ばすとした考え方を明らかにした。安倍政権当時は、政府主導の成長戦略が大企業の生産性向上、業績改善につながり、賃金上昇が中小企業にも及ぶとしたトリクルダウン政策であった。今回の新しい資本主義論は、概ね好意的に受け止められたが、今後の課題はその具体論と推進力と思われる。

 

第一次政権時には、①労働分配率向上にむけた賃上げ実施企業への税制支援の抜本強化。②奨学金制度改革と、保育の受け皿整備などの子育て支援。③看護、介護、保育従事者の収入増加のための公定価格引き上げ。などが掲げられていた。総理が描くストーリーは、法人税減税で企業に賃上げを促すと同時に、看護・介護・保育従事者に対して国が増額を図る。その分配政策で増えた可処分所得が、消費の増加につながり、結果、増えた税収を分配して次の成長につなぐ、という循環と考えられる。

 

岸田首相は公約どおり、コロナ対策を中心とした事業規模78.9兆円、過去最大の財政支出55.7兆円となる経済対策を国会に提出、この6日に成立の見込みである。来年始動をめざす「新しい資本主義」が成長力と労働生産性を高め、企業が自ら進んで賃金を引き上げる環境作りへと動き出すと期待したい。仮に、環境が整わない中で企業に賃上げを強いれば、収益見通しの悪化から設備投資の抑制や潜在力を損ね、賃金の上昇を妨げる悪循環を生みだすことにもなりかねない。また、財政資金活用による分配がコロナ対策のみでなく、賃上げにも用いられる場合、持続性を持たせるのかという点には、市場の反応も含めて注意を払いたい。賃上げを継続的なものにするには、企業の労働生産性向上が不可欠であることに変わりはない。一方では、賃上げ企業への減税実施より、労働者への直接減税もしくは欧米のような税額控除の方が効果的との意見もあり、行方を見守りたい。

 

日本経済の問題は、潜在成長力の低下であり、労働生産性の上昇率低下が、賃金が上がらない要因と考えられる。多数の国民に経済の閉塞感を感じさせるこの問題を解決しない限りは、賃金引き上げ策は持続的に機能するものとは考えにくいおそれもある。根底にある高齢少子化など、中長期の構造問題を看過して給付や減税だけでは、分配と成長の好循環は作動しにくいかもしれない。先に国民全員に支給された特別定額給付金は、低所得者ほど使わずに貯蓄したといわれている。国民にとって、将来不安の解消こそが最大の経済政策であり、給付金だけでは好循環へ到達しない可能性も否定できない。全ての企業の業績や、労働者の所得環境が悪化する景気後退と異なるのが、コロナ禍の特徴である。今回は、格差が短期的に拡大し、追加の経済政策が必要とされた。しかし、財政資金で賄うことは、将来負担の増加が需要や成長を、抑制する懸念につながることも忘れてはならない。

 

また今回の選挙で、改革の必要性を強調した日本維新の会の議席数が大きく増えた点は見逃せない。国民は必ずしも一時的な所得増加を望むわけではなく、持続的な賃金上昇につながるような潜在力向上に期待している面があることを示唆しているのかもしれない。

 

政権がめざす分配のための成長戦略、構造・規制改革が具体的に進捗されることが、国民だけではなく株式市場でも一定の評価を得られると思われる。船出した岸田新政権の推進力に期待したい。

 

(戸谷 慈伸)

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