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テーパリングを杞憂する市場 (2021年8月版)

さる6月のFOMC(連邦公開市場委員会)においてFRB(連邦準備制度理事会)は、金融政策正常化にむけて、テーパリングの議論を始めた。テーパリングとは、金融政策における量的金融緩和の縮小をあらわし、中央銀行が毎月の資産購入の規模を徐々に縮小し、最終的に購入額をゼロにしていくことである。伝統的な短期金利誘導が効かなくなった量的金融緩和の世界で、いかにコントロールするかは中央銀行の手腕にかかっている。2013年5月、FRBによる突然の量的金融緩和縮小の示唆が、米国債市場をはじめ国際金融市場に大きな波乱を巻き起こし、対応の難しさを浮き彫りにした(バーナンキ・ショック)ことは苦い記憶といえよう。今回の会合では量的緩和縮小の議論とともに、政策金利見通しを23年末ごろまでに2回の利上げが示唆されており、今後の動向に注目が集まる。

 

金融政策が正常化に向かう局面で注目されるのは、金利と株価である。13年当時は、テーパータントラムと称された市場の混乱を余儀なくされ、短・長期の債券利回りや株価の乱高下を引き起こす事態となった。翌年に交代したイエレン議長(現財務長官)が、市場との対話を通じてテーパリングを徐々に織り込み、14年はじめより債券購入プログラムを縮小、10月にプログラム終了を決定した。金融政策の正常化の流れは、景気回復を前提に業績回復を期待する銘柄が相場を牽引し、長期金利低下で金利に敏感なナスダックをはじめ株価は大幅に上昇した。

 

今回のコロナ対策でFRBは市場に過去最大規模の資金を供給しており、資産残高は前回のおよそ2倍約8兆㌦にも及んでいる。市場関係者は株高の反動が従来以上に大きくなる可能性を懸念しており、6月の会合直後もそのトラウマが市場を揺り動かした。しかしFRBは、以前の教訓から今回は市場に驚きを与えるのを避けるため、かなり前からその下地を整えるとみられており、市場の動揺が起きる予想は杞憂にすぎないと思われる。そもそもテーパリングは、金融政策正常化に向けた道程の第一段階であり、景気上向きの証である。

 

目先の米国株は、不安定な値動きを余儀なくされるかもしれない。ただFRBは、買い入れ終了後も、満期を迎えた元本と利回りの再投資を続け、市場環境が安定し数カ月にわたり政策金利をゼロ%近辺に維持した後、利上げに着手する可能性が高い。よって、今後も景気拡大と米国株全体の中期的な上昇トレンドは不変とみられ、足元の押し目は優良株の買いの好機となり得る。米国株に対する投資家の意欲も依然旺盛であり、循環物色の動きからの相場全体の底上げが期待される。今後の株式市場はカネ余りを背景にした金融相場から、企業業績中心の業績相場への移行が推察され、銘柄選別が重要となる可能性が高い。高PERで業績見通しが明らかではない銘柄から稼ぐ力の強い銘柄への選別に切り替える必要性も考えられよう。

 

20 年春のコロナ禍拡大の段階で FRB は、あらゆる対策を講じ成果を上げた。今後の正常化に向けた議論は、FOMC メンバー間でも意見の相違が見られる初期段階である。この問題を市場が織り込むとなれば、相違はもっと大きい。株価上昇が貧富の格差拡大の一役を買っていると否定的に見るものや、市場規模の拡大こそが大きな値幅で市場を乱高下させるとの声をあげるものも存在する。今年はじめより、バブル的現象も散見されている。ビットコインの高値からの急落、1 兆円以上の損失を出したファミリーオフィスのアルケゴス、SNSによるゲームストップ株の乱高下などの出来事である。こういった事象も判断材料としてよく見定めつつ、今後テーパリングなどで株価が急落しても、景気回復という錦の御旗が揺るがなければ、押し目買いの機会として捉えるべきであろう。

 

最後に、決められた期間で成果を求められる機関投資家などプロの市場参加者に対し、個人投資家には時間的制約は少ない。中長期な視点での資産運用ならば、テーパリングに動揺し保有株を売る必要はなく、購入タイミングと考えるべきだと推察したい。

 

(戸谷 慈伸)

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