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日本銀行の金融政策の行く末 (2014年12月版)

前回の衆議院の解散・総選挙がほぼ決定づけられた直前の営業日にあたる2012年11月13日の日経平均株価は8661円05銭(終値)、ドル円相場(日本銀行発表の中心相場)は79円62銭であった。これが今年11月14日には日経平均株価は17490円83銭(同)、ドル円相場は同月20日に118円20銭(同)になっており、両市場は様変わりの状況になっている。

この激変の最大の要因は日本銀行の金融政策であろう。日銀は13年4月4日に「量的・質的金融緩和」を導入しており、今年10月31日にはさらに大規模な金融緩和を発表している。日銀によるマネーの大量供給は株価の上昇と円安に多大な影響を与えたといえる。どのような金融緩和を実施したのか。ここでは国債のみに絞って言及したい。日銀は13年4月に長期国債の保有残高を12年末の89兆円から、14年末に190兆円まで拡大し、年間で約50兆円増加させると発表している。今年10月にはさらに約30兆円追加して、長期国債の保有残高が年間約80兆円増えるように買入れを行うとしている。

数年前までは日銀が長期国債を大量に買うなどという事は全くの禁じ手とされていた。それが、今年度の一般会計予算にともなう公債金発行予定額の41兆2500億円の2倍近い金額を日銀が買う見通しになっており、過去の金融論、財政論の常識からみれば隔世の感の状況だ。日銀が推進している金融政策がどのような結末を迎えるのか。将来的には国民生活に甚大な影響をもたらす可能性もある事から、一般の方々も強い関心を持っていると思われる。なぜ、現在の「量的・質的金融緩和」という金融政策が導入されたのか。経済的な条件が整備されていた事と新しい金融政策を導入する必然性があったと推察したい。

1994年の米国と日本の製造業の平均賃金を総務省統計局のデータで概算すれば以下のようになっている。94年の米国の時間当たり賃金は「12.07ドル」、日本の月額の賃金は27万6700円である。同年の日本の週当たり実労働時間は37.6時間になる事から、時間当たり賃金は1694円になる。94年12月の月中平均のドル円相場は100円17銭になり、ドル換算では「16.91ドル」、同時点の製造業の時間当たりドル建て賃金は日本が米国を「40.1%」も上回っていたのである。

同様の計算式で日米ドル建て賃金は08年12月の時点ではマイナス2.8%と日本が米国を下回る水準まで低下している。グローバル化とはあらゆるものに経済的な平準化の圧力が発生するものだと解釈している。賃金と物価の関係は極めて密接であり、日米のドル建て賃金の格差を是正するために円ベースの賃金上昇を抑制する圧力がかかっていた事もデフレの要因の一つであったと思われる。

しかし、08年9月に米国でリーマンショックと呼ばれる金融危機が発生し、米国が凄まじい金融緩和政策を実施したため、ドル円相場(月中平均)は08年8月の109円24銭から11年10月に76円72銭まで上昇し、12年10月時点でも78円97銭と大幅な円高が定着していた。円高ドル安は日本のドル建て賃金を再度引き上げる要因になり、円ベースの賃金抑制の圧力が発生する事で物価も下落し、それにより名目GDPの増加を抑制するため、税収も伸び悩み財政赤字が一層拡大する事で、日本経済は将来的に大きな破たんへと陥る歪みが蓄積されていたと思われる。

この流れを断つためには為替市場が驚くほどの大胆な金融緩和を実施し、円安ドル高の流れを定着させ、円ベースの賃金が上昇する経済状況をつくる必要があったのである。物価が上昇し、名目GDPを継続的に増加する事ができれば税収弾性値の関係から税収の安定的な拡大も可能になり、財政赤字を解決する道筋も見えてくると思われる。政治の状況がどのように変化しようが、現在の金融政策だけは堅持する事が日本経済の再生には不可欠な要素であろう。また、日銀が国債を大量に購入する正常とは程遠い金融政策の『副作用』を封じ込めるためには、消費税率の引き上げなど適切な財政再建策を実行していく事が肝要だ。日銀の金融政策を着実に成功に導くためにも、政治の英知に期待したい。

(北川 彰男)

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