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DX推進の時 (2020年6月版)

新型コロナウィルスの世界的感染拡大を受けて、今年の世界経済は未曽有の落ち込みとなりそうだ。前号でも触れたが、大きなショックの後、感染拡大が終息し経済活動が再開されても以前の成長ペースに回復するかどうかは、慎重にみておく必要がある。

 

感染症、戦争、震災、経済混乱の後は、人々の価値観や生活を大きく変える転機となりやすい。日本では、第二次大戦の敗戦は物質的豊かさの追求を生み、のちの高度成長期の原動力となった。第1次石油ショックは、輸入依存への意識が浸透し省エネ法成立と省エネ製品が普及した。プラザ合意後の円高は、金融緩和がバブル経済を生み、楽観ムードにより高額品経済へと人々を慢心させた。続くバブル崩壊は、逆資産効果と雇用抑制でデフレの時代を招き、阪神淡路大震災は、社会貢献の意識やボランティア活動を盛んにした。東日本大震災は、絆や助け合い精神の芽生えにより、環境等社会課題を解決しつつ収益を確保するソーシャルビジネスや、CSR (企業の社会的責任)活動の加速の要因となった。

 

新型コロナウィルスによる国内の死亡者数の割合が世界的に低いのは、医療従事者の懸命な対応とともに、互助の精神や民度の高さが要因ではないかと考える。非常事態宣言発令という国難に対しても、真摯に向き合う国民性は誇るべきであろう。しかし一方で、先進国における労働生産性で遅れる日本は、安全確保を目的とする意味でのキャッシュレス決済や、テレワークなどの人と人の接触を避ける「タッチレス(非接触)社会」の仕組みの遅れも現出した。

 

感染症を契機に、日本のDX (デジタルトランスフォーメーション)推進の機運が高まっている。今回の外出制限措置により、非接触、非対面、無人化の必要性が惹起され、個人の行動のオンライン化や、機械やロボットによる代替というデジタル技術活用の必要性が認識された。2018年経済産業省公表の「DX推進ガイドライン」では、データやデジタル技術を駆使し、ビジネスにかかわるすべての事象に変革をもたらすと定義され、実現されれば10年後の実質GDPを130兆円押し上げると予測されている。現在、大企業を中心に取組みは始まっているが、様々な壁によって容易に進んでいないのが実情である。同省のレポートでは、2025年までにシステム刷新を集中的に推進する必要性が強調されており、25年の崖に刷新できない場合、ICT人材不足でシステム自体の維持・継承が困難になるとともに、老朽化によって増加データの活用ができず、デジタル競争の敗者になると指摘している。また老朽化は、サイバーセキュリティやシステムトラブルのリスクを高め、既存システムの保守に人材を割く結果、最新技術を担う人材の確保が困難になるといわれており、愁眉の急を要する。

 

個人の行動のオンライン化の例として、買い物(Eコマース、オンライン配送)、仕事(テレワーク)、学習(オンライン学習)、余暇(オンラインゲーム、オンライン飲み会)、医療(オンライン診療)があげられる。また、デジタル技術による代替として、医療、工場、建設現場の人手不足対策(ロボット、ドローン)、感染・遠隔地対策(自動運転、ロボット、5G)、治療薬(AI創薬)などが想定される。今回の危機に後押しされた側面もあるが、その利便性が確認された分野も多い。自民党行政改革推進本部規制改革チームの緊急提言でも、テレワーク円滑化のために紙媒体からペーパーレスへ、押印から電子署名へのシフトなど、手続きの見直しが盛り込まれている。

 

第1次石油ショックによるガソリン高騰が、アメリカ車の凋落と日本車の躍進のきっかけとなったように、コロナショックにより中国は、最先端のデジタル技術を用いた様々な製品・サービスの実証実験や実用化を加速させ、イニチアシブ獲得に動いている。昨今まで注目されつつ進まなかったテレワークだが、コロナ禍と政府の外出自粛要請により急速に導入され、製品の品不足も発生していた。

 

ピンチをチャンスと捉え、将来のワーク・ライフ・バランスのためにもDXの推進と、来るべき世界のデジタル競争での生き残りを目指す時である。

 

(戸谷 慈伸)

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