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迫る2022年問題 (2019年10月版)

前号末尾で、社会保障負担と合算した国民負担率が、平成2年度以後に上昇したと記述させていただいた。やはり、社会保険料の上昇は深刻化な問題のようだ。

 

9月9日、大企業の会社員が加入する健康保険組合連合会(健保連)が、「2022年危機に向けた健保連の提案」とした記者会見を、厚生労働省で行った。

 

1956年、鳩山一郎総理の「全国民を包括する総合的な医療保障、国民皆保険制度を作り上げる」との表明以後、61年国民健康保険法(新国保法)施行により、現在の国民皆保険制度が確立された。その国民皆保険を維持するために今回、提案がなされた。

 

それによれば、団塊の世代が75歳に到達し始める22年から、現役世代の高齢者医療のための拠出金負担がさらに急増、医療保険制度全体の財政悪化が急速に進むと見込まれるとのことであった。

 

その試算によれば、22年度に全国約1,400の健康保険組合の保険料率は、平均で9.8%と19年度比0.6%上昇する見通し。同じく、介護保険料は0.4%上昇の2.0%、これに厚生年金の保険料率18.3%(固定)を合わせ30.1%となり、負担水準は3割を越える予想を発表した。健保連は、現役世代への負担増は限界に近いと考え、財政悪化と22年危機を前に、現役世代と高齢者世代の負担のバランス是正が急務であると、提言に及んだわけである。

 

健保連が作成した年齢区分別人口によれば、現役世代の減少と相反する形で、後期高齢者は19年の約1,852万人から22年に約1,957万人、25年には約2,180万人への増加と推計。被保険者1人あたり保険料負担額は、現行の高齢者医療制度導入前の07年度に38万3,612円であったが、昨年度には49万3,854円と11万円強の増加となった。そして、22年度には平均保険料が9.8%となり、1人あたり約55万円にまで負担が増えると推計されている。

 

会社員が支払う健康保険料には、65歳以上の高齢者にかかる医療費を賄うための拠出金が含まれる。昨年度健保連の保険料収入は8.3兆円であったが、組合加入者の会社員とその家族への支払いは約4兆円であった。対して支払った拠出金3兆4,537億円は、約42%の負担率となり、現行の高齢者医療制度を導入した19年度から40%以上の伸び率となる。

 

当然、高齢者も医療費の負担は行っているわけだが、負担の不均衡は拡大しており、今後、世代間のアンバランスにより、医療保険制度を通じた現役世代から高齢者世代への所得移転の様相を呈する形が強まってゆく傾向にある。

 

健保連は今後の見通しとして、後期高齢者の伸びが一時的に鈍化する21年までは、財政状況の悪化は避けられるものの、22年以降の団塊世代の後期高齢者入りと、現役世代の減少に伴う拠出金負担の急増については確実視している。また、新薬による高額薬剤の保険収載が今後も相次ぎ、取り巻く環境は厳しさを増すと想定している。介護保険に関しても20年度全面総報酬割(加入者割からの変更)への移行実施により負担が増加。負担軽減措置の廃止も取りざたされ、健保連の財政に影響を及ぼす懸念は大きい。

 

健保連は、政府が来年の骨太の方針で、給付と負担の見直しを含む改革に向け、22年危機を乗り切るための喫緊の課題として、各種制度の改正に取り組むよう求めた。

 

高齢者医療費の負担構造改革(給付と負担、世代間・世代内アンバランスの是正)として、1.後期高齢者の原則2割負担(75歳到達者から順次2割+段階的拡大)。2.後期高齢者の現役並み所得者にも公費5割(基準見直しによる公費負担の減少回避)。3.拠出金負担割合の上限の設定、などを求めた。保険給付の適正化(医療費の伸びの抑制)では、1.保険給付範囲の見直し(市販品類似薬の保険除外等)。2.薬剤処方の適正化(生活習慣病治療薬の適正な処方の使用指針)など、が挙げられている。

 

現役世代が高齢世代の医療費を負担し、その現役世代が高齢世代になったら、次の現役世代に負担してもらう。この現在の循環が維持されるのであれば健保連の提案は、杞憂に終わるわけだが、少子高齢化は確実であり、現役世代の負担は増加の一途を待たない。

 

現役世代に負担の増加をどこまで求めるのか。社会的合意の形成と、政府の改革への時間は待ったなしの様相である。

 

(戸谷 慈伸)

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