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TPP11拡大に期待 (2019年3月版)

昨年来、株式市場は世界の通商問題が大きな注目点とされ、不確実な状況が続いている。アメリカ発、保護主義と貿易摩擦問題に揺さぶられ、その行方や関連する企業の事業環境への影響が懸念されている。

 

2015年10月、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、アメリカ、そして日本の12カ国で大筋合意したTPP(環太平洋パートナーシップ)は度重なる交渉の末、翌年2月に署名された。順調かに思われたTPPもトランプ大統領が就任直後に離脱を表明(17年1月23日)、卓袱台をひっくり返された形となった。

 

その後、日本が中心的役割を果たし、約1年後の3月8日、米国との条件等は凍結した形ではあるが署名にこぎつけ、12月30日にTPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定=CPTPP)として発効された。当初は日本、メキシコ、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリアの6カ国間のみの効力ではあるが、今年2月発効となった日EU・EPA(経済連携協定)とともに保護貿易主義や貿易摩擦の流れに一石を投じ、世界の自由貿易体制を補う意味で大きな前進と思われる。

 

TPPは、当初、モノの関税だけでなく、サービス・投資の自由化、さらに知的財産、電子商取引、国有企業の規律、環境など、幅広い分野で21世紀型のルールを構築、アジア太平洋地域内のヒト・モノ・資本・情報の往来が活発化し、この地域を世界で最も豊かな地域にすることを目的としたものであった。引き継いだTPP11は、世界のGDPの約13%(10.6兆ドル)、貿易総額の約15%、域内の人口約5億人の経済圏をカバーする自由貿易圏の協定となる。関税撤廃やサービス貿易自由化など、急送少額貨物、ISDS(投資合意、投資許可)関連規定など22の凍結分野以外の大半がTPPのルールを受け継ぐ形となり、今後に期待される。TPP11の経済効果は、内閣官房TPP等政府対策本部の15年試算によるとアメリカ離脱の場合の計算で、実質GDPはTPP11が無い場合に比べて約1.5%押し上げられ、16年度水準で約8兆円の効果に相当、労働供給も増加する。アメリカ抜きの発効だが、今後オーストラリアやニュージーランドの農産品の関税が段階的に下がればアメリカの農家においては絶対的不利な状況が想定され、早い段階でのTPP復帰の声もアメリカ国内から上がる可能性も否定できない。

 

TPP11おける関税の改定は、原則毎年1月1日実施となっている。18年12月30日に最初の関税削減となり、翌2日後、1月1日から2年目の削減になったため18年ぎりぎりに発効された意義は大きい。タイ、インドネシア、フィリピン、韓国、台湾、コロンビア、イギリスなどTPP11への関心を示す国も多く、参加国が増えるごとにその経済効果から影響力を増す展開となるものと考えられ、保護主義的状況からの雪解けを今後期待したい。

 

さて、日米両サイドの呼び方から違う貿易協議、日本側呼称「日米物品貿易協定(TAG)」はその名のとおり、物品貿易が中心議題になると思われる。先の米中貿易協議は難航が続いており、現時点では延長される見通しもあり、日本との交渉も厳しい場となることは間違いない。現状では交渉スケジュールも明確ではないが、農産物と自動車を中心に照準が合わされている。天皇陛下即位後の5月26日に、トランプ大統領は最初の来賓として来日が決まっているだけにその頃には交渉の土台が整うものと考えられる。自動車は日本の関税率はすでにゼロであるため(米国の日本の乗用車に対する関税率は2.5%、SUVを含むトラックは25%)、日本国内の自動車販売台数減少傾向から見ても米国車の販売増を要求することもできない。よって、今以上に日本企業に対米投資と原産地規制を促し、アメリカ向け輸出の抑制と為替条項を強要する手段に出る可能性が高いと見られている。前述のTPP不参加による米国産牛肉や豚肉をはじめとした農産物は、アメリカにとって競争上不利な立場となりうる。日本の輸入牛肉の5割がTPP11域内であり、残り4割強が米国である。TPP11の農産物は段階的に関税が引き下げられる予定で米国がそのままということは、交渉が長引けば長引くほど米国の輸出業者は日本市場でハンデを負う。早期の妥結が米関係者、日米の経済においても望むところだが、アメリカ側の追加関税の発動や為替操作国への指定など、より強硬な姿勢に出る可能性も現時点では排除できない。

 

何れにしても当面、通商情勢の動き如何にマーケットは翻弄されそうである。2019年日本はG20議長国であるだけに、世界の通商問題をリードし、円満解決を望みたい。覆水を盆に返したいところである。

 

(戸谷 慈伸)

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