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食料品消費税引き下げへ (2026年9月版)

AI・半導体関連株が調整する中で、バリュー(割安)株が物色されている。4-6月期の決算発表を受け、TOPIXは堅調な動きで昨年以来の8連騰で高値を更新した。決算を機に、積極的な設備投資や価格転嫁、AIを背景とした企業収益改善の構図が再確認され、物色のすそ野が拡大する状況となった。

 

高市首相は、悲願とする食料品の消費税率を来年4月から2年間、8%から1%への引き下げを表明した。政府は先月5日に閣議決定し、秋の臨時国会に関連法案を提出する見通しで、1989年に導入された消費税が減税されるのは、今回が初めてとなる。

 

食料品の消費税率を引き下げた場合、国全体では年約4.3兆円の税収減となる見通しで、地方は地方消費税収と交付税の減少により約1.6兆円減る見通しとなる。政府は減税と併せ、29年度に本格的に導入するつなぎ措置として、中低所得者層を対象とした所得連動の給付制度も実施する予定で、減税1%相当分の年6,000億円ほどを先行給付し、食品消費税の実質ゼロ化をめざす。スーパー等の食料品や、弁当などのテイクアウト品が引き下げられる中で、外食は10%に据え置かれるため、影響を考慮して業界や中小農家への補助金支援も検討されている。減税期間は2年間で、その後に再び8%となる予定である。

 

今回の引き下げは、食料品価格上昇による家計負担の軽減を目的とした物価高対策と、消費の促進による景気刺激策であると同時に、選挙公約の実施が大きな理由とされる。

 

引き下げによって想定されるメリットは、食料品の消費税が引き下げられることで日常生活での支払い分が少なくなり、生活必需品の購入負担は軽くなる。引き下げ額を試算してみると、単純に成人1人の1か月あたりの食費代を約3万円(外食・酒類を除く)として、差額7%の12か月分で計算すると、1年あたりの単身者の節約額の目安は、25,000円程度となる。また低所得者ほど、消費に占める割合が高いため、逆進性の問題も緩和され、生活支援効果は大きくなる。申請不要で負担軽減となるため、買い物の時点ですぐに実感でき、浮いた分が他の消費に回るとすれば、経済の活性化も期待される。もし消費が増えれば、企業の売上増加につながるとともに、中小企業では納税の財務負担も軽減され、資金繰りの改善に寄与する循環が生まれる。

 

対するデメリットは、減税による税収減が年金・医療・子育て支援などの社会保障費の財源確保に影響するおそれがある。そのため、他の増税や公共サービス削減の可能性が残る。また、原材料費や人件費の上昇が続けば、値上げが継続し、期待された減税による家計の負担軽減効果が小さくなる。景気の動向次第では、減税分を消費せずに貯蓄に回すなど、経済効果が十分に現れない場合も考えられる。保存可能な米や飲料、冷凍食品などの品目については、実施前の買い控えや終了前の駆け込み需要、そして終了後の反動減が生じるなど、思わぬ騒動となりかねない。2年間のために、問題化したレジシステムや会計処理の改修に企業や行政に一定の負担が生じるほか、政策自体の持続性と効果に疑問を残す形となる。再び2年後には、税率を戻すハードルも待ち構えることとなり、今後の政治や経済の動きの不安定要因にもなりかねない。

 

減税の実現に対して、政治的な決断を評価する一方、財政悪化に伴う国債金利の上昇や円安の進行に対するマーケットの不安は、拭いきれない。首相は、赤字国債発行に頼らないとするが、実際には安定財源を確保することがないまま、赤字国債の発行で賄う形になる可能性も残る。税収の上振れ分(2025年度は補正予算時点で3.5兆円)や、外国為替資金特別会計剰余金(2024年度5兆3,600億円)の活用などで財源を確保するとしているが、税率を元の水準に戻す政治的なハードルは簡単ではない。万が一、恒久減税となり当初から安定した財源を確保できなければ、金融市場の金利上昇懸念を緩和できない。市場の懸念は、円安や債券安の方向に傾き、物価高や長期金利の上昇を通じて、物価高対策の効果を容易に相殺してしまうことにある。消費税率は、先進国の水準からすれば相対的に低いものの、元の水準に戻すことは、国民の抵抗よって実行できなくなる可能性は十分にあるだろう。

 

食料品消費税率引き下げは、株価をはじめ金融市場にも影響を与えるだけに、来年4月以後は、経済情勢を踏まえた政府の柔軟な政策判断と、手腕が問われることになるだろう。

 

 

(戸谷 慈伸)

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