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衆議院解散 (2026年2月版)

高市首相は、政権発足100日以内の1月23日、通常国会冒頭で衆議院(以下衆院)の解散に踏み切った。議員選挙の日程は、1月27日公示、2月8日投開票となる。解散を受け立憲民主党と公明党は新党結成で合意、自民党は他党の選挙協力を得ずに高市首相個人の人気に頼る闘いとなる。首相は進退を懸けて、解散の大義に国民の審判を仰ぐこととなった。

 

解散検討の報道直後となる1月13日以降、金融市場は大きく反応し、株高・円安・債券安の典型的な高市トレードの動きを見せた。責任ある積極財政の継続観測から、債券安とともに円相場は157円台半ばから一年半ぶりの159円台まで円安となり、日経平均株価は選挙後の政策と経済効果への期待を受け、54,000円台と史上最高値を大きく更新した。

 

衆院解散は、自民党結成の55年体制以降で22回、就任と内閣発足後1年以内の解散は9回を数え、そのうち与党が過半数を確保したのは6回と、就任から1年以内の解散を選択した方が勝率は高い。概ね内閣支持率には、政権発足時が高く徐々に下がる傾向があり、支持率が高い1年以内の解散は、新たな政権与党が国民の信任を得る意味合いを含む。解散総選挙で高市首相は、衆院の過半数獲得による安定政権の実現を狙うつもりだが、今回は任期満了(28年10月)までに2年9カ月余りあり、解散権が専権事項とはいえ政権への思惑が前面に出過ぎれば、党利党略という批判を招きかねない。選挙費用には国費855億円ほどが必要となるだけに、早期解散による議員の選び直しは、決断理由とともに国民に信を問う大義が求められる。衆院は、連立を組む日本維新の会と合わせて232議席と、凡その過半数(233議席)を回復しているが、参院は過半数の議席を得ておらず、ねじれ国会の状態は続く。

 

首相は解散理由として、維新と連立した新しい枠組み、責任ある積極財政、安全保障政策強化を掲げ、その信を問うとしている。理由の一つとされる安全保障には、中国のレアアースの輸出規制問題も要因とみられ、長期化した場合に、春以降の経済に打撃が及び得るとの観測も後押ししたと考えられる。

 

高市首相自身の人気と内閣支持率は、発足時点から高水準を維持しているが、世論調査では自民党に対する支持率は24年衆院選の前よりも低いといわれている。さる前橋市長選や福井県知事選でも、自民党支援の候補者が敗北しており、思惑通りの結果となるか予断は許さない。

 

1972年以降の衆院解散から選挙期間中の日経平均株価は、ほとんどが上昇を記録しており、経験則通りの動きが期待されている。その一方、解散前からの株価上昇に対しては、期待と過熱を感じる関係者も少なくはない。昨年以降の積極財政政策を、株価は既に相当分織り込んだとする見方もあり、さらなる円安、株高、債券安の余地は、さほど大きくないとも考えられている。もし160円を上回る円安や、2%水準を超える10年国債利回りが続くとすれば、先々に物価上昇率の沈静化が見込まれるなか、物価の高止まりが解消されず、実質賃金のマイナスも続き、個人消費にも逆風となる恐れがある。企業の資金調達コストの上昇や、景気への悪影響も懸念される。自民党の24年と25年の国政選挙の敗因は、円安による物価高とされるだけに、今後の円安と長期金利の上昇リスクをはらんだ食品消費税ゼロをはじめとした、今後の財政政策への姿勢に注視が必要となる。

 

この時期に衆院を解散することは、予算編成が遅れることも意味しており、年度内の予算成立が困難となる可能性が高い。その場合、暫定予算の編成で繋ぐこととなるが、暫定だけに行政の空白を防ぐ目的のため、新しい政策や事業が盛り込まれることはない。新年度入り後の予算執行となるため、新規事業を通じた景気浮揚を図ることは遅れることとなる。4月実施予定の高校無償化や、車購入税廃止に対する法的な裏付けとともに、昨年末の政府予算案に組み込んだ危機管理投資などの看板政策についても遅れる可能性もあり、政権自らが政策実行を損ねてしまう側面を持つことには注意したい。

 

現時点での株価は、選挙で単独過半数を獲得するシナリオを織り込む勢いで上昇した。日経平均株価の予想PER(株価収益率)は20倍を超え、過熱感も高まっている。古くから「噂で買って事実で売る」という市場を反映する相場格言があるように、さらなる上値追いには慎重な対応が必要と考えられる。

 

 

(戸谷 慈伸)

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