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トランプ政権1年目を振り返る (2026年3月版)

自民党の歴史的勝利を背景に、日本株の上昇基調が続いている。盤石な政治基盤による、政権の推進力への期待の表れともいえる。「責任ある積極財政」を掲げ、強い経済をめざす高市首相への期待も高まるなか、負託された政権の実行力を見守る時が来た。

 

米国トランプ政権2 期目が発足して1年が経過した今、改めて振り返ってみたい。

 

大統領は就任直後から、違法薬物や不法移民問題を名目にカナダ、メキシコ、中国に関税政策を打ち出し、矢継ぎ早にその他の国々にも鉄鋼・アルミ・銅などの素材や、自動車関連部品、特定工業製品などを対象とした相互関税を発表した。これらの措置により関税率は大幅に引き上げられたが、その後は中国や自動車関連の税率一部引き下げなどで問題は落ち着きを取り戻していた。ところが、20日の米連邦最高裁の相互関税に対する無効判決を受け24日効力を失うこととなった。大統領は即座に追加関税の15%への引き上げを表明したが、払い戻しや適用時期など不透明で混乱を招き、今後の企業の事業戦略にも影響を与える可能性が高い。

 

移民政策は、国境管理強化と強制送還拡大を柱に再設計され、警備強化や不法越境者の即時送還、難民申請手続きの厳格化が進められ、国内の摘発も推進された。大規模な予算計上で、警備の増員や拘留施設の拡充、送還体制整備によって、ひと月あたりの不法越境者は1万人を下回る水準となった。もっとも、労働市場への影響を考えるうえでは、外国生まれの労働力人口の動向に注意すべきで、供給増加の要因が減少に転じるとともに鈍化を示唆している。また政策の厳格化は、社会的摩擦や政治的対立も引き起こしており、最近では移民・税関捜査局職員による発砲事件や抗議デモも発生しており、政策を巡る緊張は高まっている。

 

財政政策は、関税や移民政策と並ぶ柱として、減税と防衛および国境警備費増額が掲げられ、これらを盛り込む「一つの大きく美しい法(OBBBA)」が7月に成立した。個人には、25年末までの時限措置だった所得減税の恒久化とともに、チップや時間外手当に対する非課税措置が加わり、法人には、研究開発や設備投資の即時償却などの税優遇措置が盛り込まれた。国防予算、国境警備・移民政策それぞれに1,700億ドル強が振り分けられる一方、低所得層向け医療保険や食料支援プログラム予算、EVの税額控除などの歳出削減が盛り込まれた。減税分は、25年半ばの成立により今年の家計に還付される予定で、個人消費の下支え材料となるが、医療給付の縮小は、低所得層ほど影響を受けやすく、中高所得層への恩恵にとどまるとの見方もある。

 

主要マクロ指標から確認すると、実質GDP成長率(前期比年率)は、25年1-3月期こそ-0.6%だったが、4-6月期+3.8%、7-9月期+4.4%と、2期連続でプラスとなり、25年1-9月期の年率換算では+2.5%と、総じて堅調を保つ結果となった。CPI(消費者物価指数)も25年は+2.6%にとどまっており、FRB目標(2.0%)は上回るものの、当初の懸念ほど上昇してはいない。堅調な背景には、AIブームに伴う関連投資の拡大と、AI関連株上昇による資産効果が家計消費を下支えしたことも要因として考えられるだろう。失業率は、年初4.0%から11月4.5%に上昇し、今年1月には4.3%に低下した。ただ非農業部門雇用者数は鈍化傾向にあり、失業率に比べると労働市場の減速が目立つ。移民流入が減少する中で、企業の採用抑制や欠員補充停止の動きとともにAI技術の普及が要因として浮かび上がる。

 

総括すると、就任1年目は公約どおりに関税政策や移民政策を推進し、OBBBA法を成立させるなど、主要経済政策では一定の成果を挙げたといえよう。関税や移民という経済的にはマイナスの政策にもかかわらず、堅調な成長を維持しインフレ率や失業率も当初の懸念ほど悪化していないことは評価できるだろう。

 

ただし現在の大統領支持率は、当初に比べ低下傾向にあり、特に経済運営や生活に対する支持率が低迷しつつある。発言には概ね対外的なものが多く、国民の間には国内対応が後回しにされているとの受け止めも多いためと思われる。直近では機関投資家の住宅購入制限や、クレジットカード金利の上限設定などの政策も俎上に上がりつつあるが、中間選挙は現政権に対する信任投票として重要な位置付けだけに、政権の今後に影響を及ぼす。対米投融資の第一弾のプロジェクトが、選挙の激戦区となるのも偶然ではないだろう。

 

 トランプ政権の政策や中間選挙の行方が、世界経済やマーケットを大きく左右するだけに、今後も注目して見守りたい。

 

 

(戸谷 慈伸)

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