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長期金利3.0%時代へ (2026年10月版)

政策金利が日米同時に引き上げられる中、株式市場は、AI関連需要と企業業績拡大への期待に支えられている。裏腹に、先行き不透明な中東情勢の物価や経済への影響や、膨らむ財政規模と金利上昇が懸念されている。来たる米国中間選挙の結果も、今後の相場を左右するだけに、現段階は方向感が定まらない展開が続いている。

 

9月に入り、日本の長期金利の指標となる10年国債利回りが、1996年以来約30年ぶりに3.0%台をつけた。8月下旬の米国ジャクソンホールでのウォーシュFRB議長の発言や、日銀の金融政策決定会合での利上げ観測が後押ししたとみられている。8月末にまとまった来年度一般会計の概算要求規模が、今年度比約20兆円増の143兆円と、財政環境の悪化懸念が強まったことも一部では要因とされる。

 

日銀の利上げは、原油価格高騰による物価上振れへの対応という理由と併せ、協調介入で円安阻止に協力した米政府の利上げ要請に応えたとの見方が、金融市場には根強い。ベッセント米財務長官は、G20会合の際に片山財務相と植田日銀総裁に財政の持続可能性や、利上げに向けた道筋に言及したことを明らかにしており、円安・債券安による米国や世界の市場に与える影響に対して懸念を示した。

 

2022年ロシアのウクライナ侵攻が、原油や穀物価格上昇の起点となり、世界的なインフレ圧力がドル高(=円安)基調を強めた。とりわけマイナス金利解除の24 年以降、円安と輸入物価上昇によるインフレ圧力が、金利の上昇ペースを早めた。昨年8月からの1年間は、日本の10年国債利回りは1.5%程度上昇しており、主要国の中でもペースが早く、世界の長期金利上昇に連動したというより、日本の上昇が世界に影響しつつあるという見方が増えている。過去1年間の米国10年国債利回りの上昇幅は、日本の約半分でしかなく、日本特有の要因と考えてもおかしくはない。今後も物価上昇率の上振れ次第で、3.0%は単に通過点とされ上昇(=債券は下落)観測が残ることとなる。

 

節目の3.0%を日常的に上回るとなれば、国民の間でも以前より金利を意識することになる。家計における金利上昇の影響は、預金残高の規模や定期預金の割合、住宅ローンの有無などで世帯ごとに異なるが、50 歳以上の中高年層中心に恩恵が享受され、若年層や現役世代にはマイナスの影響のとなる可能性が高い。預金残高の多い中高年層ほど定期預金の比率が高くなる一方、30 代を中心とした現役世代には住宅ローンの負担が増える。継続的な賃上げがなくなれば、所得格差の拡大や、消費減速による景気後退への配慮が必要となる。そうした場合、高市政権にとっては今後の積極財政の軌道修正を求める声が再浮上することも考えられる。財政悪化懸念の後退で、利回りの上昇にも歯止めがかかる場合もあるが、現状では不透明だ。

 

株式市場では、金利上昇に弱い傾向があるハイテク株やAI関連株への影響が懸念されており、長期金利の上昇が、AIブームを冷やすきっかけとなる可能性も残る。現在のAIブームの牽引役である巨大テック企業(=ハイパースケーラー)は、データセンター構築や半導体確保、電力インフラ整備などの投資に巨額の資金を投じている。OECDによれば、ハイパースケーラーを中心とする設備投資は急速に拡大し、来年には1.1兆ドルに達すると予測されている。こうした結果、AI関連企業の社債やプライベート・クレジット、プライベート・エクイティなど、市場ベースでの資金調達が大幅に増加しており、多額の社債発行を吸収するために、金利やクレジットスプレッドに上昇圧力がかかることとなる。結果的に金利の上昇は、債券市場と株式市場での資金調達を妨げるだけでなく、AI関連の実物投資の拡大にもブレーキをかける。ベッセント財務長官の発言は、世界経済や金融市場の影響が及ぶことを懸念して、円安や長期金利の上昇を促す日本の政策に対して、修正を求めるメッセージを発信したといえる。

 

釈迦に説法だが、長期金利の上昇は、経済成長の高まりやインフレ率見通しを反映する場合には良い金利上昇とみなし、経済活動にはプラスとなる。しかし財政リスクだけが高まる場合は、悪い金利上昇とみなされる。当然、金利の上昇が続けば資金調達コストが高まり、借り入れをする企業や投資家の行動は、積極的ではなくなる。リスクを取ることに慎重となれば、株式市場にとっても逆風となる。

 

今後の金利の動きについては、一段と注意を払う必要があるだろう。

 

 

(戸谷 慈伸)

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