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低利百年国債で百年インフラを構築 (2018年3月版)

日米の主要平均株価指数(終値ベース)は今年1月の高値から2月安値まで、ダウ工業株30種平均(NYダウ)は10.4%、日経平均株価も12.3%の急落相場を余儀なくされている。多くの投資家の方々の関心事は、相場はまた戻るのか、このまま下落していくのかになるのであろう。結論からいえば米国の景気拡大は少なくとも2年程度は続くので、日米とも1月の高値を年内に再度抜くとみている。ただ、これは先の事になるが、米国景気の後退のシナリオも意識せざるを得ない状況であり、本号では米国景気と株価の行方、さらに日本の株式市場や経済への影響とそれを打破するための解決策について述べたい。

 

現在は余りにも超低金利で区分が希薄になっているが、一般の預金金利と同様、債券の金利も短いものよりも期限の長いものの方が高くなっている。ただ、時にはこれが逆転する事もある。2年物国債利回りが10年物国債利回りを上回る現象は、債券の保有者が、金利の上昇が打ち止めになるのであれば長期の国債に乗り換えて、より高い金利で固定化しようとする動きから発生するものと思われる。筆者は多数の経済指標よりも、このような『人間の欲が作り上げる現象』こそが、より真実に近いとみており、同数値の値動きを景気のすう勢の先行指標として重要視している。

 

戦後の米国の景気循環となる第12波動(2009年7月より)の景気拡大期間は今年2月で104カ月目になっている。同国の景気循環の第9~11波動(第9・82年12月~90年7月・92カ月。第10・91年4月~01年3月・120カ月。第11・01年12月~07年12月・73カ月)の平均でみた場合、2年物国債利回りが最初に10年物国債利回りを上回った後(短期間の特殊要因の場合は除外)、1年8か月後に景気後退を開始しており、同長短金利の逆転は米国の政策金利であるFFレートの上昇打ち止めに平均4カ月先行している。仮にFFレートの上昇終了を19年3月と想定した場合、前述の平均値のケースで長短金利逆転は18年11月、景気後退の開始は20年7月になり、景気拡大は132カ月になると予想される。

 

第10波動の最初の長短金利の逆転は98年5月から7月まで続いているが、ロシア危機でFRBが緊急利下げする特殊要因が発生しているため除外している。これを除いた次の長短金利逆転は2000年2月になり、その1年2カ月後に景気後退に入っている。長期景気拡大で景気が伸びきったゴムのようになっていた事で金利上昇への耐久力が弱くなっていたといえる。このような事から、今回同様、長期景気拡大の第10波動と同じ数値で長短金利逆転をFFレート上昇終了の3ヵ月前とし、景気後退に対する先行期間を1年2カ月、FFレートの上昇終了を19年3月と仮定した場合、長短金利の逆転は18年12月、景気の天井は20年1月、景気後退に入るのは20年2月という想定が成り立つと思われる。

 

第10波動時の米国のNYダウは「ITバブル」と呼ばれており、株価の天井は2000年1月、景気の天井に対して「1年2カ月先行」している。ちなみに1989年末に大天井をつけた日経平均株価も、景気の天井の91年2月(86年12月からの第11循環波動)から、1年2カ月先行しており、期せずして日米の典型的なバブル相場は景気に対して、1年2カ月前に天井をつけている。

 

前述のように米国景気の天井を20年1月とし、株価の天井は景気に1年2カ月先行すると仮定した場合、NYダウの天井は18年11月と想定される。今年1月下旬から2月上旬にかけてのNYダウの急落は10%程の「調整局面」の可能性が高く、20%以上の大幅な下落となる「弱気相場」入りは、米国の景気後退を織り込む今年12月頃から19年中になると思われる。『人間の欲の成せる業』である米国債の2年物と10年物の金利の逆転は、米国株の天井や景気後退の時期に多大な影響を及ぼす事から、今後の金利の動向に注目したい。

 

いずれにしても、景気の先行指標である米国株は19年には天井をつける可能性が高く、米国株が景気後退を織り込む20%以上の下落相場になった場合、日本の主要平均株価は米国株以上の下落率になる事が予想される。それは、高額商品への消費意欲の大幅減退など経済の強い下押し圧力になるであろう。日本経済は巨額の財政赤字に対する大増税不安や低賃金のアジア各国からの安価な輸入品などデフレ圧力が常態化している状況だ。

 

そこに株価の急落が加われば19年は2%の物価上昇率の達成どころか、再び物価下落圧力が強くなるとみている。19年10月には消費税率の引き上げも予定されているが、累積財政赤字は特に若者世代の負担が重く、これ以上の同税率引き上げの先延ばしという選択肢はないと思われる。19年以降のデフレ圧力を緩和するためにも当コーナーの今年1月号でご紹介した『日銀引き受けの低利百年国債』の発行を検討すべきだ。同国債を日本の老朽インフラ更新の財源とし、百年間耐久可能な社会インフラの構築を目指すべきであろう。

 

(北川 彰男)

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