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銘柄選定のポイント (2018年12月版)

株式の個別銘柄の選定は1976年に弊社に入社して以来の課題であった。前半の23年間は営業職であったが、特に99年より調査部に配属になった事から、銘柄選定が最大の業務になっている。当証券展望の三英傑銘柄、東海四県銘柄紹介、01年3月より担当している中部経済新聞・投資指南(10年3月まで隔週、同年4月より毎週執筆)等の個別銘柄の選定や銘柄紹介の作成に携わる仕事を長期間担当させていただいている。各選定銘柄は掲載前日の日経平均株価と比較して、騰落率の優劣がどのようになっているのかを常に追跡してきたが、個別銘柄の実績は勝ったり負けたりの繰り返しで、なぜ、もっと相場を当てる事が上手くなって、投資家の皆様のお役に立てなかったのかと忸怩たる思いである。

 

ただ、人生100年時代とも言われており、まだ何らかのお役に立てるのではないかとの考えから、注目銘柄として過去に取り上げた銘柄を5年間ほど遡り、選定銘柄の検証をしてみる事にした。全く今さらながらの事だが、銘柄選定の際、もっとチャート(けい線)の形に留意する必要があったと今回の検証で気が付く事になった。若い頃にチャートの研究をした事もあったが、何度も手痛い目にあった事から、大局をみる月足チャート以外は余り見ないようにしていた。

 

仕事の関係で銘柄紹介のコメントを書かなくてはいけない事もあり、「経済・市場分析」→「材料・テーマ性」↓「投資指標」→「チャートの形」という順番で銘柄選定に取り組んできたが、その順番の変更が肝要だと再認識する事になった。投資家の皆様はコメントを書く必要がないため、「チャートの形」→「投資指標」→「材料・テーマ性」↓「経済・市場分析」という順番にした方が良いと思われる。もちろん、チャート分析はそうなる可能性が高いというものであり、絶対的な投資尺度ではないので、十分な留意が必要なのは言うまでもない事であろう。

 

移動平均線とはある一定期間の価格から平均値を計算し、グラフで表したものだ。その日を含めた過去何日間(何週間等)の終値を毎日計算して連続線にしている。13週は約3カ月、26週は約6か月、52週は約1年の終値の平均の値動きを表す移動平均線だ。これは多くの方がご存知の事だが、一般的には移動平均線で13週が26週を下から上に突き抜ける事をゴールデンクロス(GC)と言い、買いの目安とされており、13週が26週を上から下に突き抜ける事をデッドクロス(DC)と言い、売りの目安とされているが、もちろん、そのような単純なものではない。このGC・DCのシグナルがでた際、重要なポイントの一つが、52週線の動きになると思われる。

 

52週が下向きの場合、いわゆる騙しのGCが入る事がよくある。また、52週が上向きの場合、今度は騙しのDCが入る事がよくあるものだ。GC・DCが実現しても、52週のすう勢により、相場は上下に大きく変動するので、留意すべきであろう。株価の値動きは企業業績の動向に最も影響を受けるが、現状の事は基本的には相場に反映されているものだ。相場に勝つためには企業業績の先行きを当てる事が肝要だが、それはプロのアナリストがしのぎを削っている事であり、プロでも容易に当たるものではない。それを一般投資家がやろうと思っても元々無理な事だ。『相場は相場に聞け』という格言もある。

 

銘柄選定は「チャートの形から入った方が良い」というのは、そのような考えからだ。株は下げたら買い、上がったら売れば良いといわているが、そのような単純なものではない。上昇する株はさらに上がり、下落する株は一段と下落する傾向が強い。何よりも流れに乗る事が相場に勝つ可能性を高くすると思われる。どのような「チャートの形」がポイントになるのか。結論のみを簡略に述べたい。買いを入れる場合の基本的な銘柄選定は13週・26週・52週が上向きで、時価はそれらの移動平均の上にあるか、13週、26週をやや割り込む水準で留まっている銘柄にした方が良いと思われる。

 

投資は上げている銘柄に素直に乗る「順張り投資」が相場の基本であろう。お祭りをしている間に参加をして、あとはどの時点で引き上げるのか、それが投資の重要なポイントになる。その引き上げる際のチャートの形はGCが実現して、半年から1年以上経過(52週が上向きの状態が定着)し、GC後に50%から2倍以上も上昇した際、上向きになっていた13週・26週・52週のうち、13週が横ばいから下向きに転じたら、警戒信号であろう。さらに26週も横ばいになり、13週が26週を上から下に突き抜けるDCが発生したら、かなり有力な売りシグナルになると思われる。

 

そのDCが実現したのち、半年から1年以上経過(52週が下向きの状態が定着)し、下落率もDC後に30%以上は下落した方が良いと思われる。そこで、下向きになっていた13週・26週・52週のうち、13週が横ばいから上昇に転じたら、投資のチャンスといえる。さらに26週を下から上に付き抜けるGCが実現したら、かなり有力な買いシグナルになるであろう。いずれにしろ、相場には絶対的な投資尺度はない事から、銘柄選定は『13週・26週・52週等のチャートの形、投資指標、材料・テーマ性、市場・経済分析を加味して、総合的に判断』する事が肝要であろう。人生100年時代、今後とも銘柄選定をライフワークとして取り組んでいきたい。

 

(北川 彰男)

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